2008年04月16日

「完全恋愛」牧薩次

完全恋愛

著者名:牧薩次(著)
出版社:マガジンハウス
出版年:2008.01
ISBN :9784838717675


ビックリです。
あの辻真先が、懐かしの牧薩次(まき・さつじ=つじ・まさきのアナグラム)名義で、本格ミステリに挑んだ「完全恋愛」

もちろん1970年代に、「仮題・中学殺人事件」などの牧薩次&可能キリコのコンビのシリーズを初めとして、数知れずミステリを書かれているわけですが、今年75歳になった、その辻真先が、こんなすごいミステリを書くとは思いもしませんでした・・・

冒頭のこの一文が、本書のテーマ。

他者にその存在さえ知られない罪を
完全犯罪と呼ぶ
では
他者にその存在さえ知られない恋は
完全恋愛と呼ばれるべきか?


お話は・・・
昭和20年…アメリカ兵を刺し殺した凶器は忽然と消失した。昭和43年…ナイフは2300キロの時空を飛んで少女の胸を貫く。昭和62年…「彼」は同時に二ヶ所に出現した。平成19年…そして、最後に名探偵が登場する。推理作家協会賞受賞の「トリックの名手」T・Mがあえて別名義で書き下ろした究極の恋愛小説+本格ミステリ1000枚。

まあミステリ部分は、ちょっと・・・と思うところも正直ありますが、上記のテーマに関しては、ラストにある真相が明かされて、やられた! と久々に感じました。

ヒロインの小仏朋音(こぼとけ・ともね)、山岸珠美(やまぎし・たまみ)などという美しい韻を踏んだ名前にうっとりしつつ読み進めていたら思い切り足をすくわれてしまいました・・・。
読んでて引っかかる部分がたくさんあるので、ラストはどういう風にまとめるのかと思っていたら、何とキレイに、しかも美しくまとめてくれました!!
もう、さすがは辻真先!! というしかありません。

それにしても完全恋愛≠ニは、かくも切ないものか・・・
ミステリとしては、不満もあるんですが、そこはいいです。書きません。
恋愛小説として読んで、涙して下さい。
話題性もあるので、年間のベスト争いにも入ってくるかもしれませんね。

仮題・中学殺人事件

著者名:辻真先(著)
出版社:東京創元社
出版年:2004.04
ISBN :9784488405137

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2008年03月03日

「倒立する塔の殺人」皆川博子

倒立する塔の殺人

著者名:皆川博子(著)
出版社:理論社
出版年:2007.11
ISBN :9784652086155



わたしの目的は貴方に読ませることだけだったのに。
扉の、蔓薔薇模様。そうしてタイトル。丹念にあれを描いていたときの自分を、思い出す。


皆川博子という作家は、映画「写楽」の或るシーンを観て以来、読まず嫌いになってしまい、「巫女」という短編集しか読んだことがなかったんですが、この「倒立する塔の殺人」は、面白く読めました。

なんと言っても、私の好きな作中作∞入れ子構造の物語。

戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、物語は驚くべき結末を迎える…。物語が物語を生み、秘められた思惑が絡み合う。万華鏡のように美しい幻想的な物語。
(「BOOK」データベースより)

実際は、この作中作&舶ェは、虚構が現実を蝕んで、現実が虚構となる・・・みたいな複雑な構造ではありませんでした。

このお話、面白いし、こういうの好きです。
でも、ミステリかって聞かれると・・・? 「倒立する塔の殺人」って作中作の物語で、ミステリ的な部分もあるんですが、そこはシンプル。
(ネタバレ反転)ラストで設楽久仁子が書き足したちょっとしたこと&舶ェが怖かったです。

面白いのは、桜庭一樹「青年のための読書クラブ」を思い出させる、阿部欣子、三輪三枝(さえだ)、設楽(しだら)久仁子たちの、戦中・戦後の時代にも負けない生き方。戦争より友人達との人間関係の方が大切なわけですね。。。

それと、表紙装画の佳嶋さん、ステキですねえ。
(巻末にある、エゴン・シーレも、いいなあ・・・)
posted by たちばな ますみ at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・ま行

2007年12月03日

「有頂天家族」森見登美彦

有頂天家族

著者名:森見登美彦(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2007.09
ISBN :9784344013841


「それは阿呆の血のしからしむるところだ」
我々兄弟が何か悪さをして騒ぎを起こすたびに、父はそう言って笑ったものだ。


これ、全然ミステリではないけれど、面白いです。初モリミーの「有頂天家族」

お話は・・・
糺ノ森(ただすのもり)に住む狸の名門・下鴨家の父・総一郎はある日、鍋にされ、あっけなくこの世を去ってしまった。遺されたのは母と頼りない四兄弟。長兄・矢一郎は生真面目だが土壇場に弱く、次兄・矢二郎は蛙になって井戸暮らし。三男・矢三郎は面白主義がいきすぎて周囲を困らせ、末弟・矢四郎は化けてもつい尻尾を出す未熟者。この四兄弟が一族の誇りを取り戻すべく、ある時は「腐れ大学生」ある時は「虎」に化けて京都の街を駆け回るも、そこにはいつも邪魔者が!かねてより犬猿の仲の狸、宿敵・夷川家の阿呆兄弟・金閣&銀閣、人間に恋をして能力を奪われ落ちぶれた天狗・赤玉先生、天狗を袖にし空を自在に飛び回る美女・弁天―。狸と天狗と人間が入り乱れて巻き起こす三つ巴の化かし合いが今日も始まった。
(「BOOK」データベースより)

とにかく、下鴨四兄弟も、夷川の阿呆兄弟も、その他大勢のキャラも立ちまくりで、いつまでも読んでいたいと思わせる楽しさです。
登場人物すべてが、かわいらしくて、憎めないヤツばかりだし、最終章においては、四兄弟のそれぞれの活躍にほろっときてしまいました・・・。

モリミー恐るべし。
面白いとは聞いてましたが、他の本も読んでみることにします。

ところで、冒頭で、ミステリではない≠ニ書きましたが、狸鍋にされてしまった父・総一郎の死の謎を解くミステリと言えなくもありません。(ちょっと強引ですけど)

第二部もあるそうなので(第一話は「二代目の帰朝」)、今から楽しみです。
posted by たちばな ますみ at 13:45| Comment(3) | TrackBack(1) | 国内作家・ま行