2008年06月25日

「陰獣」江戸川乱歩【本日の短編・9】

日本探偵小説全集 2 江戸川乱歩集

著者名:江戸川乱歩(著)
出版社:東京創元社
出版年:1984.10
ISBN :9784488400026


先日の横溝正史「黒猫亭事件」より、さらに古く、発表が昭和3年なので、80年前の作品。

江戸川乱歩「陰獣」は傑作。
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posted by たちばな ますみ at 06:28| Comment(4) | TrackBack(0) | 本日の短編

2008年06月16日

「黒猫亭事件」横溝正史【本日の短編・8】

本陣殺人事件

著者名:横溝正史(著)
出版社:角川書店
出版年:1973.04
ISBN :9784041304082


1月以来、久し振りの【本日の短編】
NHK教育の「私のこだわり人物伝」横溝正史「獄門島」を取り上げてて、横溝を読みたくなってしまいました。
で、「黒猫亭事件」を(中編だけど)、再読。
やっぱり、いい。
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posted by たちばな ますみ at 07:04| Comment(2) | TrackBack(1) | 本日の短編

2008年01月26日

「ヒロイン」パトリシア・ハイスミス【本日の短編・7】

11の物語.bmp
大好評の(と、自分では思っているけど、現状コメント、トラバ共にゼロ…)今年初めての【本日の短編】です。

本日ご紹介する短編は、「太陽がいっぱい」の原作者として名高いパトリシア・ハイスミスのデビュー作「ヒロイン」「11の物語」所収)。

その前に。
ハイスミスよりはずっと有名であろうルース・レンデルの傑作長編「ロウフィールド館の惨劇」は、こんな書き出しで幕を開けます。

ユーニス・パーチマンがカヴァディル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである。

なんと、冒頭1行目にして、犯人の名前被害者、そして動機までを明かしてしまっているんです!!
しかも、この文章には小手先の叙述トリックなどはなく、文字通りの犯人、被害者、動機なわけです。
それでいて、長編小説1作まるまるを、卓越したストーリーで、ぐいぐい読ませてしまうんですからスゴイとしか言いようがありません。

何が言いたいかと言うと、ハイスミスの「ヒロイン」を初めて読んだ時に思ったのが、これは、「ロウフィールド館の惨劇」じゃないか!! しかも、インパクトは、「ヒロイン」の方が短編でキレがある分、勝っている。

ちょっとネタバレ気味ですが、どちらも、登場人物(被害者)が右か? 左か? を選択する際、必ず悪い方(自分の命がかかってます!)を選択してしまい、気づくべき事(自分の命がかかってます!)に気づかず、あー、どうしてそこで気がつかないの?≠ニかどうして、そんな一言を・・・≠ニ思いつつ読むべき小説です。

ラストは予測できるし、すごいツイストも待ってはいませんが、読者が(心の中で)期待しているラストのカタストロフィへ向かって、ひたすら爆走していくストーリーが、とにかく心地いいです。
(後味は悪いにせよ…)

今回は、「ヒロイン」の紹介なのか、「ロウフィールド館の惨劇」の紹介なのか、分からなくなってきましたが、ラストは間違いなく「ヒロイン」の方が怖いです。

どちらも必読。
「11の物語」も1冊まるごと必読ですよ)

11の物語

著者名:パトリシア・ハイスミス(著)
小倉多加志(訳)
出版社:早川書房
出版年:2005.12
ISBN :9784151759512


ロウフィールド館の惨劇

著者名:ルース・レンデル(著)
小尾芙佐(訳)
出版社:角川書店
出版年:1984.01
ISBN :9784042541059

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2007年12月25日

「クリスマス・イヴの惨劇」スタンリイ・エリン【本日の短編・6】

クリスマス12のミステリー

著者名:I.アシモフ(編集)
池央耿(訳)
出版社:新潮社
出版年:1985.10
ISBN :9784102186039


今日は、【本日の短編】クリスマス・スペシャルということで、短編の名手スタンリイ・エリン「クリスマス・イヴの惨劇」を紹介します。

決して後味が言い訳ではないので、読んだことのある方からは、クリスマス・ストーリーとしてはどうなの? という声も聞こえて来そうですが、クリスマスという言葉から真っ先に連想したのが、強烈なインパクトを持ったこの、エリンの短編。

スタンリイ・エリンという作家は、1年に短編を1作しか書かないことでも有名で、それだけに1作1作が切れ味鋭く、(ツイストが多いと言うわけではありません)心理描写も素晴らしいです。
そのエリンの描く、取って置きのクリスマス・ストーリー。
是非、読んでみて下さい。
短編ですし、どんなストーリーかは書きませんが、初読の時の衝撃は未だに忘れられません。


この「クリスマス・イヴの惨劇」は、新潮文庫の「クリスマス12のミステリー」(私が読んだのはこちらが先だけど、こちらは本屋さんにはもうないかも)もしくは、早川書房の「異色作家短篇集 11 特別料理」(こちらでは「クリスマス・イヴの凶事」のタイトル)で読めます。

前者は、アシモフによるクリスマス・ストーリーのアンソロジー。後者はエリンの短編集で、
どちらも楽しいです。(前者では、日本では無名ですがニック・オドノホウという作家の「煙突からお静かに」という短編も必読。こちらはユーモア系です)

特別料理

著者名:スタンリイ・エリン(著)
田中融二(訳)
出版社:早川書房
出版年:2006.07
ISBN :9784152087416

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2007年11月20日

「人間椅子」江戸川乱歩&ヤン・シュヴァンクマイエル【本日の短編・5】

人間椅子

著者名:江戸川乱歩(著)
ヤン・シュヴァンクマイエル(画)
出版社:エスクァイアマガジンジャパン
出版年:2007.09
ISBN :9784872951110


江戸川乱歩を、【本日の短編】に取り上げようと思ったものの、一作だけと決めているので、どの作品を取り上げるべきか?? ずいぶん迷ってしまいました・・・

まず初めに浮かんだ、横溝正史も絶賛していた「陰獣」や、実際近年起こったあるネットがらみの犯罪の遠因にもなったと(私には)思われる「パノラマ島奇談」(世界一美しく、官能的な絞殺シーン!!)は、短めの長編(中編)だし、前半と後半がチグハグで物語の構成は破綻してるけど、とにかく面白い「孤島の鬼」はもろに長編。「芋虫」の鮮烈さや、「鏡地獄」の不思議な味も捨てがたいし、どれにしようか・・・と、思っていたら、素晴らしい本を見つけました。

主演の藤井隆と第一話ゲストの乙葉の結婚と第七話「地獄の道化師」での石川梨華の真っ赤な猿轡(さるぐつわ)姿くらいしか見所のなかった(ウソです、ゴメンナサイ。ほとんど観てませんでした…)日本テレビの「乱歩R」の第一話にも取り上げられた、乱歩のあまりにも有名な短編「人間椅子」に、チェコのシュルレアリズムの映像作家ヤン・シュヴァンクマイエルが、画を描いたという奇蹟のようなコラボレーション本が、今回取り上げる一冊、「人間椅子」です。

「人間椅子」と言えば、最近も、宮地真緒、小沢真珠主演で、「エロチック乱歩 人間椅子」のタイトルで映画化されたり、古くはカルト映画監督石井輝男の大傑作映画「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」での小池朝雄の怪演(大爆笑!!)などが思い出されるわけですが、シュヴァンクマイエルの画は、表紙を見ていただければお分かりの通り、今までのどんな映像化作品にも引けをとらないと思われるくらいのインパクトがあります。

実際に本を手に取って観ていただけると分かるのですが、ボタンや本物の(何かの)毛のようなものを貼り付けていたりして、本来は印刷されたものではなく、シュヴァンクマイエル言うところの触覚的≠ネ触ってみるべき画≠ネのです。
気持ち悪いです、ハッキリ言って!

しかし、これこそが、「人間椅子」という、変体チックな乱歩趣味の爆発小説のアクの強さにも負けず、対等にわたりあえるシュヴァンクマイエルの描く「人間椅子」なわけです。

さらには、アニメーション作家でもあるシュヴァンクマイエルらしく、この「人間椅子」は動きます。
気持ち悪いです、ハッキリ言って!!

どう動くのかは、皆さんの眼で、触覚で、確かめてみて下さいね。。。
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2007年11月14日

「スカルプロック」クラーク・ハワード【本日の短編・4】

ホーン・マン

著者名:クラーク・ハワード(著)
山本光伸(訳)
出版社:光文社
出版年:1998.12
ISBN :9784334761059


クラーク・ハワードの物語は、泣けます。

昔、「EQ」という雑誌があった時、私が一番楽しみにしていて、毎号一番最初に読んで、毎回泣いていたのが、クラーク・ハワードの短編でした。

クラーク・ハワードという作家に馴染みのない方も多いと思いますので、短編集「ホーン・マン」木村仁良氏の解説を引用させていただきます。

ハワードの短編はパズル・ストーリーでもなく、サプライズ・エンディング・ストーリーでもなく、筋の展開や結末までほとんど予想できるストーリーなのだが、人物描写がしっかりしているので、じわっと感動を呼ぶペーソス豊かな人情噺というところだろうか。それに、暗い時事問題を扱いながらも、結末には一種の「救い」がある。

この「スカルプロック」もしかり。
18歳に満たない娼婦のリタと、麻薬のために亡くなった妹と一緒に住んでいた男に対して、あること≠するために街に出てきたインディアンのジョージとの交流を描いています。
それなりのツイストと、ラストではきっちりと泣かせてくれて、アメリカの浪花節とも呼ばれるハワードの作品の良さが十二分に楽しめる一編です。

また、「スカルプロック」ではインディアン、表題作「ホーンマン」では前科者、「老友モリー」では老人と、社会的弱者を主人公に据えることで、弱者故の、他者に対する優しさ、次第に通い合う、心と心の交流が胸に沁みてきます。

恥ずかしながら、今回、【本日の短編】に取り上げるにあたり、初めて、ハワードの短編が一冊にまとまっていると知りました。(しかも、世界で初めてらしい)

こんなに素晴らしい作品をまとめて読めるなんて、この上ない幸せです。もう、「EQ」のバックナンバーを探しに古本屋まわりもしなくていいんですよ。
(まあ「ホーン・マン」は古本屋か図書館を探さないとダメですが・・・)

是非、読んで、そして涙して下さい。
posted by たちばな ますみ at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 本日の短編

2007年11月06日

「赤毛」アイザック・アシモフ【本日の短編・3】

黒後家蜘蛛の会 4

著者名:アイザック・アシモフ(著)
池央耿(訳)
出版社:東京創元社
出版年:1985.11
ISBN :9784488167059


「あなたは何をもってご自身の存在を正当となさいますか?」

「赤毛」は、ご存知アシモフによる「黒後家蜘蛛の会」の中の一編。

このシリーズは、黒後家蜘蛛の会という月1回、職業もまちまちな、男ばかり6人の集まる例会に、毎回男性ゲストが招かれ、ゲストから出された謎を、みんなで解決しようと知恵を絞るが、いつも解決するのは、給仕であるヘンリーだった・・・という安楽椅子探偵ものです。

お話は…
喧嘩別れをして、レストランに入っていった妻のヘレンを追って、ゲストであるアンダスンがレストラン中を探しますが、どこにも見当たらない。仕方なく家に帰ってみると、妻は先に帰っていて、自分は魔法を使ってピュッ……と帰ったと言い張る・・・という極めて単純なものです。

とにかく、私は、「黒後家蜘蛛の会」に限らず、この「赤毛」ほど、キュートで、チャーミングな話を、読んだことがありません。
今回、久しぶりに再読してみてラストでは、涙が出そうになりました。

また、密室ものとしても優れていて、機械トリックでなく、心理トリックであるところが素晴らしい!! 
(しかもこのトリックが、キュートなわけです)
ネタバレになるので、詳しくは書けませんが、「黄色い部屋の謎」が、あれだけ評価されているのに、何故、この「赤毛」が評価されないのかが分かりません・・・。

ミステリでありながら、悪意もなく、謎解きも美しく、ハッピーエンドなこんな小説もある≠ニいう意味でも、未読の方にはオススメします。
(本の値段が上っているので、立ち読みでもして下さいね。ちなみにヘレンは、藤原紀香のイメージかな?)
posted by たちばな ますみ at 11:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 本日の短編

2007年11月05日

「給水塔」恩田 陸【本日の短編・2】

象と耳鳴り

著者名:恩田陸(著)
出版社:祥伝社
出版年:2003.02
ISBN :9784396330903


【本日の短編】第2回目は、恩田陸「給水塔」。(「象と耳鳴り」祥伝社文庫所収)

「ほら、あれがその『人喰い給水塔』ですよ」
隣の男がのんびりと指差す方向を、関根多佳雄は見上げた。


本格ミステリ短編集「象と耳鳴り」は、「夜のピクニック」の回で、いいですよって紹介させてもらったんですが、とにかく私はこの「給水塔」という短編が好きなので、取り上げました。

探偵役は、「六番目の小夜子」関根秋の父親である関根多佳雄

「象と耳鳴り」は本格ミステリ中心ですが、この「給水塔」は、ホラー色のある短編です。

『人食い給水塔』の本題の前に、事件を語る時枝満との間に、水≠ノ関しての会話があります。
ここらへんが、恩田陸の雰囲気作りのうまいところですね。
満が多佳雄にこう言います。

「僕はね、人間が水を恐がるのは別の理由があるんだと思うんですよ。人類が誕生して、陸上生活を始めたものの、一時期水の中に戻った時代があるという説はご存知ですか? でも、現在こうして僕らは地上にいる。なぜか? ある日人類は水から上ったんだ。きっとね、水から急いで上らなければならないほど恐ろしいことが水の中で起きたんですよ。だから今でも水が恐い」
(P55−56・勝手に中略・後略)

本編には、直接は関係ないんですが、この部分が一番好きです。鳥肌が立ちました。。。

給水塔から転落死した主婦、行方不明になった小学生たちに関する謎解きと、前述の怪談調の部分の雰囲気作り、そして、いつもながらの結末のぼかし具合が、この「給水塔」においては、すべてプラスに働き、絶妙のバランスで、この作品を傑作にしています。
必読。
装丁の話です…
posted by たちばな ますみ at 07:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 本日の短編

2007年10月26日

「スレドニ・ヴァシュター」サキ 【本日の短編・1】

ザ・ベスト・オブ・サキ 1

著者名:サキ(著)
中西秀男(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:1988.06
ISBN :9784480022295


今日から、新しい試みとして、ミステリの短編小説の紹介をしていきたいと思います。
本当は、毎日1冊読んで、毎日更新したいんですが、私の読書力では、とても無理。。。
そこで、今年読んだ(あるいは過去に読んだ)国内外の短編小説の中から、私の気に入っているものを、紹介していこうという企画です。
基本的に、短編集の中の、1編なので、立ち読みとか、図書館で借りたりして、気楽に読んでもらえるといいかな、と。

題して【本日の短編】。(そのままですね…)

記念すべき第1回目は、サキ「スレドニ・ヴァシュター」

「スレドニ・ヴァシュター、どうぞひとつだけぼくの願いを叶えてください」

サキの作品は要約すれば、作品紹介にあるように残酷さとユーモア、とぼけた語り口、簡潔な文体で、心の暗部を描き出す≠ニいうものかも知れません。
確かに、この「ベスト・オブ・サキ」を通して読めば、(特にクローヴィス・サングレールを主人公としたものは)その通りですが、ほぼ、その条件を備えつつ、恐怖小説の傑作とも言えるのが、この「スレドニ・ヴァシュター」です。

コンラディンは十歳だが医者はあと5年はもつまいと診断していた。
両親はいなくて、病弱なコンラディンは、厳しい後見人の従姉との生活で、窮屈で、退屈な日々を送っていた。
そんな彼が唯一、現実逃避できるのが、暗い茂みに隠された庭の奥の物置小屋だった。
そこで彼は密かに、メンドリと大イタチを飼っていたのだが、大イタチに、スレドニ・ヴァシュターと名づけた時から、大イタチは、彼の神となり、信仰となっていく。
そして、ある日・・・

あまりにも有名な「あけたままの窓」や、人語を話す皮肉屋の猫の話「トバモリー」、ツイストの効いた「ハツカネズミ」などなど、サキらしい作品も紹介したいところですが、ユーモアよりも、恐怖小説とも言える「スレドニ・ヴァシュター」は、最初の重い一文から、ラストまで、一切無駄が無く、緊張感にあふれていて、また、主人公の立場がサキの幼年時代を思わせるとなれば、正に鬼気迫る傑作の名に相応しいと言えるでしょう。
未読の方は、是非一度、読んでみて下さい。

ところで、この「スレドニ・ヴァシュター」、今、読もうと思っても、ちくま文庫「ベスト・オブ・サキ T」は品切れ状態で、創元推理文庫「怪奇小説傑作集 2 新版 英米編」 くらいでしか読めないんですね・・・
(ネットなら買えますが、立ち読みできないし・・・)

ちなみに、私が初めてサキを読んだ新潮文庫「サキ短編集」には入っていません。
「トバモリー」も入ってませんけど、新潮文庫版は、お手軽でオススメです)

ザ・ベスト・オブ・サキ 2

著者名:サキ(著)
中西秀男(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:1988.06
ISBN :9784480022301


サキ短篇集

著者名:サキ(著)
中村能三(訳)
出版社:新潮社
出版年:1958.02
ISBN :9784102026014

posted by たちばな ますみ at 03:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 本日の短編