2008年01月31日

「作者不詳 ミステリ作家の読む本」三津田信三

作者不詳

著者名:三津田信三(著)
出版社:講談社
出版年:2002.08
ISBN :9784061822610


この「作者不詳 ミステリ作家の読む本」、作者が三津田信三なので、期待はしてましたが、ここまで素晴らしい本格兼メタ・ミステリが読めるなんて、思っていませんでした。
(私が三津田信三ファンだから、評価が甘い訳ではありませんが、今年中に、これ以上面白いと思えるミステリが読めるのか心配でなりません)

お話は・・・
奇妙な古書店で手に入れた曰くつきのミステリ同人誌には怪異が宿っていた。見世物小屋から消えた赤ん坊/残酷で屈折した高校生らが鏖殺された事件の恐るべき記録ノート/無惨に切断された首が招く無人島の殺戮。本格に徹した幾多の謎に現実は絡めとられ、身の毛もよだつ終幕が襲う。気宇壮大なミステリ曼陀羅。

「迷宮草子」という同人誌に掲載されている体験実話と思われる7つの物語の謎を解かなければ、それを読んだ者は、消えていってしまう・・・というもの。

この、ひとつひとつの短編が、実に素晴らしい!!
特に第二話「子喰鬼縁起」の素晴らしさ!!!

問題編は、わずか30頁ほどなのに、てんこ盛りにされている謎と伏線の数々。
一種の密室もので、刀城言耶シリーズのラストの謎解きを彷彿とさせる、二転三転する謎解きの爽快感と、張り巡らされた伏線の見事なまでの回収ぶり!!
久しぶりに本格ミステリを読んでいて痺れました。

また、第五話「朱雀の化物」と、第七話「首の館」は、登場人物が一人ずつ死んでいって最後には誰も居なくなってしまうアガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」に代表される<テン・リトル・インディアン型ミステリ>
同じジャンルのミステリでありながら、それぞれトリックのポイントを変えて面白さを出しています。

それにしても、作者三津田信三の、この執拗なまでのメタ・フィクションへのこだわりは、一体何なんでしょう??

「迷宮草子」が、作中作の同人誌であり、そこに隠された秘密は? くらいのメタなら分かりますが、なんと(ネタバレです)メタ構造にするためだけに、「耳の聞こえないはずの沙霧にノックの音が聞こえたはずは無い」などと「霧の館」の謎解きにわざわざ疵を付けるなんて、考えられないでしょう? すごいメタへのこだわり!! あくまでも7つの短編も含めての「作者不詳」ということなんですね。

まあ「霧の館」に関しては、作家になる前に投稿して採用された「霧の館 迷宮草子 第一話」「本格推理3 迷宮の殺人者たち」 所収)という短編があって、こちらを読んでも、その部分の記述は同じで、解決編も「作者不詳」「月曜日」の解決編と同じです。

ということは、その疵はそのままで「本格推理」に投稿しているんですね。
この「作者不詳」を最後まで読まない限り、選考時に、矛盾点と解釈される可能性があるのに、それでもそのままだなんて・・・そこまでしてのメタ構造なのに、ラストでそれが、あまり活きてないのが少し残念です。


ところで、この「作者不詳」、2003年版「このミス」では、女優の池波志乃が6位に推している他は、誰も、どこにも言及されていません。(私が見た限りでは)
こういうマイナーだけど面白い作品を、教えて欲しいがために毎年買っているのに・・・
と言うことは、毎年、こういう面白い作品が、無名だというだけで見過ごされてるんでしょうねえ・・・ホラー色もほんとんどないのに。。。

とにかく、★★★★★です。

本格推理 3

著者名:鮎川哲也(編集)
出版社:光文社
出版年:1994.04
ISBN :9784334718688

posted by たちばな ますみ at 10:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 三津田信三
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