2008年04月30日

「賢者の贈り物」石持浅海

賢者の贈り物

著者名:石持浅海(著)
出版社:PHP研究所
出版年:2008.03
ISBN :9784569698496


石持浅海「賢者の贈り物」、思わぬ拾い物でした。
PHP文庫「文蔵」に、隔月連載されていた、童話やО・ヘンリーの物語などをモチーフにした短編集。
(特に決まった登場人物も探偵役もなく、ただ磯風さんという名前の美人の女性が毎回登場しますが、同一人物ではありません。よね?)

ついつい、一気に読んでしましましたが、もったいないことをしました。
出来れば一日一話が理想かも。

お話は、石持浅海お得意の安楽椅子探偵もので、同じ石持の、「Rのつく月には気をつけよう」の1話に出来そうなくらい、雰囲気がそっくりのものもありました。

人は死なない、犯罪もない(犯罪ではなく、高校生のテストでのカンニングくらい)なかでの、日常の謎ばかり。

が、しかーし!!
これが、実に本格してて面白い!!

例えば
同期の3人の女の子を呼んで開いた週末の鍋パーティー。みんなを送り出した翌朝、部屋には、女物の靴が一足。代わりにサンダルがなくなっていた。週明けに出社しても、誰もその間違いを言ってこないのはなぜか? その動機と誰かを推理する「ガラスの靴」

フイルム・カメラから、デジタル・カメラに切り替えた私に、妻がプレゼントしてくれたのは「カメラのフイルム」だった。私がフイルム・カメラを使用していないことは、妻も知っているはずなのになぜ? 有名なО・ヘンリーの表題作に相応しいロジックの面白さの「賢者の贈り物」

他にも、オブラートに書かれたカンニング・ペーパーの謎を、試験中にひたすら解く「可食性手紙」や、ラストのサプライズに思わず笑みがこぼれる「泡となって消える前に」など、粒ぞろいの短編ばかりです。

それにしても、ページ数の割には、ロジックのこねくり回し度は高く、特に巻頭の「金の携帯 銀の携帯」なんか、もう、どうでもいいよ・・・と思わせるくらいに執拗に、一人で、あーでもない、こーでもない、と論理に淫してます。

まあ、それも石持浅海ならではの面白さ。PHP研究所から出てて、面白みのないタイトル、地味すぎる表紙、小さくて薄すぎる作者の名前、にめげずに是非、読んで欲しい一冊です。
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2008年04月28日

「雷の季節の終わりに」恒川光太郎

雷の季節の終わりに

著者名:恒川光太郎(著)
出版社:角川書店
出版年:2006.11
ISBN :9784048737418


異界を書かせれば恒川光太郎ほど上手い作家はいない、と思う。

デビュー作にして、第12回日本ホラー小説大賞受賞作「夜市」をはじめとして、「風の古道」「秋の牢獄」などなど、ほとんどの作品が、異界における物語。
この「雷の季節の終わりに」も、またしかり。

現世から隠れて存在する小さな町・穏(おん)で暮らす少年・賢也。彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?

今、住んでいるすぐ隣に、ひっそりと人知れず口を開けている世界。
すぐ隣にはあるけれど、簡単には行き来できない世界。

その世界観に、ぐいぐい引き込まれます。
やっぱり恒川光太郎は、ストーリー云々よりも、この雰囲気ですね。
ミステリでも、ホラーでもないけれど、恒川ワールドとも言える独特の物語。
いいですね。
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2008年04月26日

「クラリネット症候群」乾くるみ

クラリネット症候群

著者名:乾くるみ(著)
出版社:徳間書店
出版年:2008.04
ISBN :9784198927769


2001年に発表された「マリオネット症候群」に、新作書き下ろしの「クラリネット症候群」をカップリングした乾くるみの中編集。

「マリオネット症候群」のお話は・・・

とにかく私は驚いた。ある晩、目覚めたら、勝手に動いている自分の身体。意識はハッキリしてるのに、声は誰にも通じない―まさか私、何かに乗っ取られちゃったの!?誰の仕業かと思っていたら、なんと操り主は、あこがれの森川先輩らしいの。
でも、森川先輩って、殺されちゃったらしくって…それっていったい、どういうこと?とっても奇妙なパラサイト・ストーリー。

自分の人格に他人の人格が乗り移る(あるいは入れ替わる)っていうのは、それほど珍しくもないのですが、さすがは乾くるみ
途中で、そう来るか? 的展開になり、かつ、森川先輩を殺した意外な犯人も、分かってしまうんですが、そこからが面白い。
意外な展開が待ってます。ラストは普通ですけど。

「クラリネット症候群」のお話は・・・

ドレミ…の音が聞こえない?巨乳で童顔、憧れの先輩であるエリちゃんの前でクラリネットが壊れた直後から、僕の耳はおかしくなった。しかも怪事件に巻き込まれ…。僕とエリちゃんの恋、そして事件の行方は?

これ、暗号ものなんですが、解けません、てか、クラリネットに関しての知識がないと解けないんで、解く気もしません。。。

暗号と、もう一つのキモは、巨乳・童顔のエリちゃんこと本庄絵里=B
作者・乾くるみ的には、モデルは、小説中にも名前のあがっているほしのあき≠轤オい。

巨乳・童顔好きの方は是非。

マリオネット症候群

著者名:乾くるみ(著)
出版社:徳間書店
出版年:2001.10
ISBN :9784199050787

.
posted by たちばな ますみ at 08:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 乾くるみ

2008年04月24日

「山魔の如き嗤うもの」三津田信三 読了!!

山魔の如き嗤うもの

著者名:三津田信三(著)
出版社:原書房
出版年:2008.04
ISBN :9784562041510


待ちに待った「山魔(やまんま)の如き嗤うもの」三津田信三による刀城言耶(とうじょう・げんや)シリーズ最新作!!

私は、刀城言耶シリーズを、こうしてリアルタイムで読めるだけでも幸せ(待たされる訳だけど)なのに、このクオリティ!! 感無量です。

前作「首無の如き祟るもの」は素晴らしい出来だった訳ですが、「山魔の如き嗤うもの」も負けてません。待たされた甲斐がありました。

お話は・・・

忌み山で人目を避けるように暮らしていた一家が忽然と消えた。惨劇はそこから始まる。
あたかもそれは六地蔵様の童唄のようだった。
「しろじぞうさま、のーぼる」
一人目の犠牲者が出た。
「くろうじぞうさま、さーぐる」
二人目の犠牲者──。
「あかじぞうさま、こーもる」
そして……

消失と惨劇の忌み山で
刀城言耶が「見た」ものとは……

物語は、郷木靖美(ごうき・のぶよし)という人によって書かれた「忌み山の一夜」と題された原稿から始まります。

ここの雰囲気は、同じ三津田の「蛇棺葬」「百蛇堂」を思わせる滑り出し。いつもの土俗ホラー部分は、ここに集約されてて、山の中で、例の如く様々な怪異と、一家消失の謎が待ち受けています。
そして、人間関係など、ややこしい部分もこのパートのみ。

刀城言耶のパートになってからは、前作「首無」よりも、登場人物を極限まで切り詰めることで、人間関係も分かりやすく、複雑怪奇な地理や建造物や儀式もなく、さらに読みやすくなっています。
反対に、ホラー・テイストは少なくなってますが、刀城言耶のファザコンぶりもうかがえ、また、<怪想舎(かいそうしゃ)>の編集者祖父江偲(そふえ・しの)との掛け合いも楽しくて、(人物描写の弱さはありますが)一歩前進です。

そして!! 今作も、快刀乱麻を断つ≠ニはこのこと。
ラストの刀城の謎解きでは、「首無」同様、ある一つの謎が解かれた途端に、すべての謎が一気に解明され、伏線も回収され行く様は、圧巻!!
冒頭の一家消失事件を皮切りに、童唄になぞらえた連続殺人事件の謎が、ここまでキレイに解決されると気分爽快!!

さらに!! これもお約束通りに、二転三転のツイストが、ラストのラストまで待っているとなれば、ファンとしても嬉しい限り。

こうなると、さらに次回作への期待がいやが上にも高まってしまいます・・・
(三津田が書いてたように、京都の遊郭を舞台とした「幽女の如き怨むもの」になるのかな??)

山魔の如き嗤うもの山魔の如き嗤うもの山魔の如き嗤うもの山魔の如き嗤うもの山魔の如き嗤うもの


ネタバレ御免
posted by たちばな ますみ at 04:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 三津田信三

2008年04月22日

「官能的 四つの狂気」鳥飼否宇

官能的

著者名:鳥飼否宇(著)
出版社:原書房
出版年:2008.01
ISBN :9784562041374


鳥飼否宇「官能的」は面白すぎ!!

鳥飼否宇の作品は、「異界」しか読んでいないんですが、基本的にこの作家、バカミス作家なんですね?

タイトルは、官能的≠ナ、さらに狂気≠ネどという言葉の入ったサブタイトルまでついてて、おまけに、すべての見開きの右ページ上にはご丁寧に官能的≠フ三文字が踊っています。
人目のある場所では、かなり読みにくいです、はっきり言って。

の、割には表紙画はアランジアロンゾの軽いタッチになってたりして、でも、この画には・・・

お話は・・・

変態する変態助教授・増田米尊(よねたか)のストーキングフィールドワーク中、ターゲットの女性が公園のトイレで惨殺される。「唯一の」目撃者・増田の話が事実だとすれば増田以外に犯人がいなくなってしまうのだが…。そこへ増田の助手、変態ウォッチャーの千田まりが、なんと現場に落ちていたという「凶器」を持ってやって来る。ディクスン・カーの名作になぞらえた四つの事件―狂気に、変態数学者ならではの超絶思考で挑む。最凶のバカミスコンビ、降臨。

カーは草葉の陰で泣いてるかもですが、増田助教授の変態ぶりに笑わされつつ、結構、本格ミステリしてて、「夜歩くと……」はストーキング&密室もの、「孔雀の羽根に……」はピーピング&犯人消失、「囁く影が……」も●●●&一種の密室もの。
そして、謎を解くのは、興奮すればするほど頭が冴え渡る変態・増田米尊。

「赤じゃないか!」(中略)
「よくないな。あなた、赤はよくない。一説に赤パンは男心をくすぐるなんて言うけれど、とんでもない。赤い下着を見て興奮するのは牛くらいのものだろう」


そして、隠れ女王様・千田まり&クロちゃん。

「さあ、変態ちゃん、わたしの前にひざまずいてごらん。そして、足の指をお舐め!」

とにかく笑っちゃいます。たまりません。

そして、ラストの「四つの狂気」に待ち受ける、バカミス的なオチとツイスト!!
気持ちいいです。
それにしても、(表紙のお遊びや、カー≠セからカラス≠セとか、千田まり=血だまり(?)とか、タイトルの二つの意味だとか、ホントに細かいですね。でも増田・千田コンビは、今回で終わりかな?
同じ変態・増田ものの「本格的 死人と狂人たち」も読むことにしよう。

本格的

著者名:鳥飼否宇(著)
出版社:原書房
出版年:2003.09
ISBN :9784562036820

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2008年04月19日

「モンスターズ」山口雅也

モンスターズ

著者名:山口雅也(著)
出版社:講談社
出版年:2008.03
ISBN :9784062145930


山口雅也って最近、人気がないみたいで淋しいかぎり。

別冊宝島の「もっとすごい!! 『このミステリーがすごい!』でも、1988−2008年版で、国内編、「生ける屍の死」が、並み居る傑作を抑えて、宮部みゆきの「火車」に次いで、堂々の第2位!! なのに、「読者が選ぶベスト・オブ・ベスト」では、何と! 20位にも入らず圏外。。。信じられません。票が割れたの?

そんな山口雅也の最新中短編集が「モンスターズ」

ドッペルゲンガーを扱った「もう一人の私がもう一人」
山口らしいトリッキーなハードボイルドもの「半熟卵(ソフトボイルド・エッグ)にしてくれと探偵(ディック)は言った」
タクシーの中の会話だけでストーリーが進められるがオチがイマイチな「死者の車(デス・カー)―――ある都市伝説」
流し読みしちゃった「Jazzy」、そして。

集中で一番面白かった「箱の中の中」。(タイトルからして私好み!!)

強迫観念のように《箱》に執着しつづけた幻の美術家・匣本夜一(こうもと・やいち)
その匣本の居所が二十年ぶりに判明、インタビューすべく、フリーの編集者・綾瀬千尋とカメラマンの吉川恭介、そして、匣本と少なからぬ因縁のある作家・黒木冥海(めいかい)が匣本の元へと赴く。しかし、そこで三人を待ち受けていたのは、謎の《秘密箱》だった・・・

みたいなストーリーです。
ま、これもラストは、普通というか、大ドンデン返し!! もないのですが、《箱》に関する衒学趣味や、匣本の様々な芸術作品の話などは興味深く読めました。
(この綾瀬千尋&吉川恭介コンビは、他にも作品があるみたいなので、このテイストのストーリーなら、そちらも是非読んでみたいです。)

ラストは、吸血鬼(ヴァンパイア)、人狼(ヴェアヴォルフ)などモンスター総出演の「モンスターズ―――怪物團殺害事件」

てなことで、「生ける屍の死」を未読の方は、本屋へGОですよ!!

生ける屍の死

著者名:山口雅也(著)
出版社:東京創元社
出版年:1996.02
ISBN :9784488416010

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2008年04月18日

「裁判員法廷」芦辺拓

裁判員法廷

著者名:芦辺拓(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.02
ISBN :9784163267906


2009年より始まる裁判員制度をとりあげた芦辺拓「裁判員法廷」

弁護士・森江春策を登場させてはいるものの、あくまでも主人公は、裁判員であるあなた=B
「審理」「評議」、そして「自白」の三話構成で、裁判員制度というものを、分かりやすく説明しつつ、謎が解かれていきます。

それにしても。
「審理」「評議」の真相は、ちょっといただけないな、と思いつつ読み進めていたのですが、そしたら、あなた!!
「自白」で、やられましたよ!!
殺人に関しての、それぞれの証言が錯綜する中、被害者の家に誰が、いつ、訪れたのかは、分かってしまったのですが、本作のキモは、他にあったんですね。

ラストに至って、この小説は、三話まとめて一つのミステリだったのだということが分かります。あーすごいぞ。だって、(「プロローグにかわるメッセージ」にも前から順に≠チて書いてあるし、「自白」のあなた≠ノ関する叙述トリックのためのミスディレクションとして「審理」「評議」で二人称のあなた≠使ってるとすれば、やっぱりメインは「自白」ということになりますよね?

なんか今回、ネタバレっぽいですか?

お詫びに(?)「自白」来栖綴チャンのイメージにピッタリの堀北真希チャンをどーぞ。

堀北真希.bmp
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2008年04月16日

「完全恋愛」牧薩次

完全恋愛

著者名:牧薩次(著)
出版社:マガジンハウス
出版年:2008.01
ISBN :9784838717675


ビックリです。
あの辻真先が、懐かしの牧薩次(まき・さつじ=つじ・まさきのアナグラム)名義で、本格ミステリに挑んだ「完全恋愛」

もちろん1970年代に、「仮題・中学殺人事件」などの牧薩次&可能キリコのコンビのシリーズを初めとして、数知れずミステリを書かれているわけですが、今年75歳になった、その辻真先が、こんなすごいミステリを書くとは思いもしませんでした・・・

冒頭のこの一文が、本書のテーマ。

他者にその存在さえ知られない罪を
完全犯罪と呼ぶ
では
他者にその存在さえ知られない恋は
完全恋愛と呼ばれるべきか?


お話は・・・
昭和20年…アメリカ兵を刺し殺した凶器は忽然と消失した。昭和43年…ナイフは2300キロの時空を飛んで少女の胸を貫く。昭和62年…「彼」は同時に二ヶ所に出現した。平成19年…そして、最後に名探偵が登場する。推理作家協会賞受賞の「トリックの名手」T・Mがあえて別名義で書き下ろした究極の恋愛小説+本格ミステリ1000枚。

まあミステリ部分は、ちょっと・・・と思うところも正直ありますが、上記のテーマに関しては、ラストにある真相が明かされて、やられた! と久々に感じました。

ヒロインの小仏朋音(こぼとけ・ともね)、山岸珠美(やまぎし・たまみ)などという美しい韻を踏んだ名前にうっとりしつつ読み進めていたら思い切り足をすくわれてしまいました・・・。
読んでて引っかかる部分がたくさんあるので、ラストはどういう風にまとめるのかと思っていたら、何とキレイに、しかも美しくまとめてくれました!!
もう、さすがは辻真先!! というしかありません。

それにしても完全恋愛≠ニは、かくも切ないものか・・・
ミステリとしては、不満もあるんですが、そこはいいです。書きません。
恋愛小説として読んで、涙して下さい。
話題性もあるので、年間のベスト争いにも入ってくるかもしれませんね。

仮題・中学殺人事件

著者名:辻真先(著)
出版社:東京創元社
出版年:2004.04
ISBN :9784488405137

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2008年04月14日

「パノラマ島綺譚」江戸川乱歩×丸尾末広

パノラマ島願・.jpg
丸尾末広は素晴らしい!!

江戸川乱歩のあまたある作品の中でも、繰り返し映像化、ビジュアル化されてきた傑作「パノラマ島綺譚」

その「パノラマ島綺譚」を丁寧に、原作に忠実に、かつ大胆に劇画化してます、いいです!!

昭和初期の風俗といった、乱歩が書ききれていない部分までキッチリと、しかも、ラストへの伏線である「RAの話」をしっかり冒頭で登場させ、乱歩の原作を補完している処などはホントに泣けてきます。。。

それにしても、全体の三分の一を超すパノラマ島の描写は、とにかく素晴らしいの一言。
脱帽です。

今、圧倒的な筆力でついに描き尽くされる、
驚異の「楽園」の全貌、めくるめく大パノラマ!
満都騒然、妖美凄絶、天下部類の、極上怪奇幻想譚!


という、帯のコピーにいつわりなし。
これは、実際読んで、感じていただくしかありません。
パノラマ島の崩壊・破綻を予感させる、例の千代子の絞殺シーンも美しく、轟きわたる花火の音が聞こえて来るようです。

また、主人公の人見広介(ひとみ・ひろすけ)が源三郎の墓を掘り返す、鬼気迫る描写の恐ろしさ。
原作にない、自分の歯を抜く場面を含め、人見の決意がひしひしと伝わってくる前半最大の見せ場で、私はこのシーンが一番好きです。

それにしても、ラストに(ネタバレ反転)唐突に出てきて偉そうに人見を糾弾する明智って、つくづくしょうもない男ってカンジしかしませんよね。「犯人は芸術家だが、探偵は批評家にすぎない」 という言葉を思い出します。

まあ、一度読んで、そして感じて下さい。丸尾末広「パノラマ島綺譚」

パノラマ島綺譚

著者名:江戸川乱歩(著)
丸尾末広(著)
出版社:エンターブレイン
出版年:2008.02
ISBN :9784757739697

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2008年04月11日

「山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー」山口雅也 編

山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー

著者名:山口雅也(編集)
ジェイムズ・パウエル(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.12
ISBN :9784043455034


山口雅也編集による本格ミステリ・アンソロジー

全体は、

 @ 意外な謎と意外な解決の饗宴
 A ミステリ漫画の競演
 B 「謎」小説(リドル・ストーリー)の饗宴」
 C 幻の作家たちの競演
 D 密室の競演T(最後の密室)
 E 密室の競演U(密室の未来) の6部構成。

まず@では、巻頭のジェイムズ・パウエル「道化の町」が、被害者も、容疑者も、警察もすべて道化師、というまさに「道化師の町」で起こった殺人事件のお話。そして、この世界ゆえの動機、ルールによって解決されるという異色作。
(本書のすぐあとで、「道化の町」のタイトルで、ジェイムズ・パウエルの短編集が刊行されました)

それと面白かったのは坂口安吾「ああ無情」
短編ですが「本格ミステリ」がギッシリ詰まってます。

Aは、無いほうが良かったです。

そしてBは、私の大好きなリドル・ストーリー

リドル・ストーリーとは、不可解な謎のみを突き付けて、解決(結末)はあえて書かず、読者の想像にゆだねる形式の小説のこと

その代名詞とも言えるフランク・R・ストックトン「女か虎か」は、基本中の基本なので、もちろん掲載されてますが、それよりも、クリーヴランド・モフェット「謎のカード」が何度読んでも楽しめて、大好き!!

このお話の解決(?)については、何時間でもあーだ、こーだと話が出来そうなくらい、面白いです。

DEの密室ものでは、巻末のJ・G・バラード「マイナス 1」がОK!! ちょっと毛色の変わった密室ものです。

リドル・ストーリーが気になる方には、紀田順一郎編「謎の物語」が、絶対のオススメ!!
1冊まるごとリドル・ストーリーです。
「女か、虎か」も、「謎のカード」も入ってますよ。
(私は電車で、この「謎の物語」を、終点を過ぎても読み続けてました・・・居眠りしてるのなら、他の人が起こしてくれたりするんでしょうが、一心不乱に本を読んでる人には誰も声なんか掛けてくれないんですね・・・(泣)

謎の物語

著者名:紀田順一郎(編集)
出版社:筑摩書房
出版年:1991.03
ISBN :9784480041517

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2008年04月10日

「山魔の如き嗤うもの」三津田信三 もう少し・・・

すみません、我慢できないので・・・。

山魔の如き嗤うもの

ストーリーなんか、どうでもいいんです。
新しい刀城言耶シリーズが読めるだけで、私は幸せなんです。

「山魔の如き嗤うもの」感想はこちら・ネタバレ注意!!
posted by たちばな ますみ at 06:15| Comment(4) | TrackBack(0) | 三津田信三

2008年04月09日

「狐火の家」貴志祐介

狐火の家

著者名:貴志祐介(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.03
ISBN :9784048738323


貴志祐介による、弁護士・青砥(あおと)純子&防犯ショップ店長・榎本径(けい)の「硝子のハンマー」コンビの中短編集。

すべて密室を扱った事件なんですが、それぞれにテイストが異なるので、飽きることなく楽しめました。

表題作「狐火の家」は、唯一の出口の外には、足跡が付いていない、というガチガチの古典的密室。
物語としては後味は悪いけれど、集中では一番面白かったのですが、「硝子のハンマー」と同じ犯人視線での解決編は、やめて欲しいです。
ミステリとして面白くない。

「黒い牙」は、サスペンス風の密室もので、純子以外には、たった二人しか登場人物がいないのに、読ませます。(まあ、他にアレ≠ヘいますが・・・)
それにしても、こんなの実行可能なのかぁぁぁぁ!!!???
と、思えるバカミス的トリックは、どうよ???

それにしてもアレ′凾「な人には堪らないでしょうね。
私が小さい頃に住んでた家には、「狐火の家」に出てきたアレ≠ヘいたのですが、すごく大人しかったので結構平気でした。。。
でも、「黒い牙」のラストのスプーンがどうこうというのは・・・??? 気持ち悪すぎ!!

そして、榎本視線で、将棋の棋士の密室殺人を解く「盤端(ばんたん)の迷宮」
殺人があった部屋に、内側からチェーンがかかっているのですが、犯人にも、被害者にも、動機がない・・・という動機探し≠ェ面白い。
でも、刺されたのに、咄嗟に棋譜(1六桂)と時間的(二時十分)なことにまで頭が回るのかがすごく気になりました。

で、問題の「犬のみぞ知る Dog knows」 
これはまあ、オマケみたいなものですね。(笑

とにかく、全編を通して、純子&榎本コンビの掛け合いが楽しいです。笑えます。
筆者によれば、少なくともあと1冊は続編が、書かれるみたいなので、鶴首して待ちましょう。

貴志祐介と言えば、韓国版映画の「黒い家」が公開されますね。
こっちは日本版・大竹しのぶバージョンより、さらにホラーテイストがアップされてる感じで怖そうです・・・

黒い家

著者名:貴志祐介(著)
出版社:角川グループパブリッシング
出版年:1998.12
ISBN :9784041979020


↑ これは日本版ですが、今はカバーが韓国版「黒い家」バージョンになってます。
posted by たちばな ますみ at 09:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 貴志祐介

2008年04月08日

「百蛇堂 怪談作家の語る話」三津田信三

百蛇堂

著者名:三津田信三(著)
出版社:講談社
出版年:2003.12
ISBN :9784061823440


後半の「百蛇堂」は、「蛇棺葬」の作者である、龍巳美乃歩が、作家三津田信三に、その話を語るところから始まります・・・

お話は・・・

作家・三津田信三に託された実話怪談の原稿。読んだ者には忌わしいあれが現れて…忽然と姿を消す。不可能状況で頻発する児童連続失踪事件と「あの原稿は世に出してはいけない」という龍巳の言葉は何を意味するのか?葬り去られるべきものが世に出たことで謎と怪異が続発!そしてラストに待つ衝撃の結末。

怖いです。
前半では、三津田の同僚の玉川夜須代の体験談が、めちゃくちゃ怖いです。
夢に出てきそうです・・・

そして、お約束通りに、「蛇棺葬」の話の内容と三津田本人の体験・思考が次第にシンクロし始めると、もうダメです・・・ずるっずるっ といっちゃいま〜す!!

後半は、龍巳さん宅での夜のお話が、めっちゃ怖いです・・・
こんな家に泊るのはイヤ。

そして最後は、読者の期待を裏切らず(?)メタで〆てくれる訳ですが、問題なのは、本の背表紙にあるこの本を読んではならない訳がある・・・の一文。
これってネタバレでしょう? というか途中で分かっちゃうけど。

さらに簡単に言えば、この「蛇棺葬」「百蛇堂」は三津田版  「リング」  みたいなものでしょう?
(それに、このオチならば、同じ三津田のアレ(反転でも書けません)の方がキレが良くっていいですよ)

にしても。
やっぱりラストの怒涛の畳み掛けは、素晴らしいの一言!!
「百物語という名の物語」の名前がラストに出てくるのは、どうかと思うけど(あくまで作家三部作ということですね)、いろんな伏線を回収しつつ、メタを織り込みつつ、ホラーテイストは損なわず、これだけの物語が書けるなんてやっぱり三津田信三ってサイコーです!!

これで三津田信三全部読んでしまったので、次は今月刊行の「山魔の如き嗤うもの」待ちです。
(刀城言耶シリーズの短編も次の「メフィスト」に載る? タイトルは「迷家(まよいが)の如き動くもの」「罪人(つみびと)の如き消ゆもの」などと決まってるみたいですが・・・「本格ミステリーワールド」より)
posted by たちばな ますみ at 08:20| Comment(2) | TrackBack(0) | 三津田信三

2008年04月07日

「蛇棺葬」三津田信三

蛇棺葬

著者名:三津田信三(著)
出版社:講談社
出版年:2003.09
ISBN :9784061823143


三津田信三による「蛇棺葬」「百蛇堂」は、一応、二冊に分かれてはいるものの、ニコイチで書かれた小説です。
(もっと大きなくくりで言えば、「ホラー作家の棲む家」「作者不詳」とで、「作家三部作」になります。四冊ですが)

まあ、「蛇棺葬」に関しては、単独でも読めないことはありません。
ありませんが、物語の謎が謎として残ったまま終わってしまうので、オススメは出来かねます。
「2008 本格ミステリベスト10」三津田信三インタビュー(P113)によれば、もともと一つの長編にするはずが、二冊になり、編集部から「蛇棺葬」でミステリ的オチを付けるようにと言われたとか。それならやっぱり、前編・後編表示をすべきだと思いますが…)

まず、前半の「蛇棺葬」は、三津田信三ではなく、龍巳美乃歩(たつみ・みのぶ)という人物の書いた「実体験を元にした小説」という体裁をとっています。

お話は・・・
幼いころ父に連れて行かれた百巳家。そこに無気味な空気を漂わす“百蛇堂”がある。私はそこで見たのだ。ずるっ…ずるっ…と暗闇を這うそれを…。やがて旧家に伝わる葬送百儀礼の最中に、密室状態の堂内から忽然と父が消える。屍体に取り憑く魔物の仕業か?日本の怪異に背筋が凍る、傑作ホラージャパネスク。

とにかく、砂川君のおじいさんのくれる煎餅とか(これは「百蛇堂」だっけ?)、百蛇堂の中で何かに襲われる場面とか、得体の知れないマーモウドン≠ネどなど、すごく怖いんですが、後半の、亡くなった人と一緒に、まるまる一晩、百蛇堂に籠もって、湯灌(ゆかん=死体を湯で拭き清めること)する「殯屋籠り(もがやごもり)」が一番、気持ち悪くて怖かったです・・・
夢にまで出てきそう・・・もー、いやっ!! て感じ。

そして、密室で人が消える事件も起こります。
これは、人為的なものなのか? それともマーモウドンの仕業なのか?

という謎に、一応の解決・解釈が付けられて、後編「百蛇堂」へと続きます。
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2008年04月04日

「夜市」恒川光太郎

夜市

著者名:恒川光太郎(著)
出版社:角川書店
出版年:2005.10
ISBN :9784048736510


結局、読んでしまいました恒川光太郎「夜市」

「秋の牢獄」を読み、この「夜市」も読みたくなった訳ですが、こちらも雰囲気たっぷり、独特の恒川ワールド全開です!!

まず、表紙がいい。
「夜市」というタイトル、夜のイメージに相応しく、暗い闇の中に三匹の金魚が、時に忘れられたように、ゆったりと泳いでいる・・・
いいです。動きがあって、この一枚の絵にストーリーがあります。胸が詰まります・・・

で、期待しすぎました。
第十二回 日本ホラー小説大賞受賞作の「夜市」と書き下ろしの「風の古道(こどう)」、両方とも、「秋の牢獄」テイストのファンタジー系ホラーとも言うべき作品。

雰囲気はいいし、ラストにはミステリ的オチも待ってるにも関わらず、それほど(三人の審査員が絶賛するほど)いいとは思えない、てことは、私には向いてないってことかなあ・・・

「夜市」のお話は・・・

大学生のいずみは、高校時代の同級生・裕司から「夜市にいかないか」と誘われた。裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。夜市では望むものが何でも手に入る。小学生のころに夜市に迷い込んだ裕司は、自分の幼い弟と引き換えに「野球の才能」を買ったのだという。野球部のヒーローとして成長し、甲子園にも出場した裕司だが、弟を売ったことにずっと罪悪感を抱いていた。そして今夜、弟を買い戻すために夜市を訪れたというのだが―。第12回日本ホラー小説大賞受賞作。

とか言いながら、次作が出ればまた読んじゃうかも。
posted by たちばな ますみ at 08:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 国内作家・た行