2008年03月31日

祝・復刊!! 「虎よ、虎よ!」アルフレッド・ベスター

虎よ、虎よ!

著者名:アルフレッド・ベスター(著)
中田耕治(訳)
出版社:早川書房
出版年:2008.02
ISBN :9784150116347


虎よ! 虎よ! ぬばたまの
夜の森に燦爛と燃え。
そもいかなる不死の手 はたは眼の
作りしや、汝がゆゆしき均斉を。
             ウイリアム・ブレイク


既読の人ならば、この詩を読むだけで、全身の血が沸騰してくるほどの傑作、アルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」寺田克也の手による新装版で、復刊されました。(拍手!!)

てか、品切れ状態(絶版?)だったんですね・・・
本屋へ行っても、SFコーナーには、ほとんど行かないので、気づきませんでしたよ、私。

とにかく未読の方、そこのあなた! うらやましい!!
これから、この歴史的名作SFを読めるなんて・・・

まあ、1956年に書かれた、50年以上前の作品なので、多少の古さはあると思いますけど、大丈夫!!
顔に虎の刺青をされた、復讐に燃えるガリヴァー・フォイルの物語は、必ずや、あなたの心を揺さぶることでしょう。

冒頭のブレイクの詩に始まり、プロローグの名文・名訳、

まさに黄金時代だった。雄渾な冒険が試みられ、生きとし生けるものが生を謳歌し、死ぬことのむずかしい時代だった……しかし、誰ひとりそんなことをかんがえてはいなかった。これこそ、富と窃盗、収奪と劫略、文化と悪徳の未来の実現だった……しかし、誰ひとりそのことを認めてはいなかった。

を読めば、(立ち読みでも)そのまま一気呵成、文豪アレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯」に構想を得たというこの通称トラトラ≠アと「虎よ、虎よ!」の華麗にして、悪趣味、復讐に囚われた男の物語を、息つく暇もなく読んじゃうことでありましょう!!

ああ、うらやましい!!! ストーリーなんかどうでもいいから、とにかく本屋へGО!!

(今回は、いつもと違い、復刊記念で、既読本でしたが取り上げました…ところで、表紙は元の生頼範義版の方がいいぞ! という意見もあるようですが、あなたはどうですか?)

虎よ、虎よ

著者名:アルフレッド・ベスター(著)
中田耕治(訳)
出版社:早川書房
出版年:1978.01
ISBN :9784150102777

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2008年03月26日

「シェルター 終末の殺人」三津田信三

シェルター 終末の殺人

著者名:三津田信三(著)
出版社:東京創元社
出版年:2004.05
ISBN :9784488017064


三津田信三「シェルター 終末の殺人」、これってホラー? ミステリ? どちらなんでしょ??

お話は・・・
東京創元社から依頼された長編のため、三津田信三は核シェルターの取材に赴く。奇矯な富豪・火照陽之助(ひでり・ようのすけ)が自邸の庭に造り上げた生垣迷路、その下にシェルターの入口は用意されていた。迷路を抜け、他のシェルター見学者たちと入口の前に立った途端、空に巨大な閃光が。慌てて中に逃げ込んだ見学者たち。外の様子はまったく分からない。果たしてあの巨大な光は核爆発だったのか。滅亡の予感に怯える彼らを更に連続密室殺人が襲う。何の動機も発生するはずのない初対面の人間同士のなかで、いったいなぜ殺人は続くのか―。極限状況下での圧倒的な恐怖と謎解きを描いた、鬼才による終末のミステリ。

まあ、敢えて上記のデータベースに、突っ込みを入れさせてもらえば、滅亡の予感に怯える<Vーンなんか無いわけですが、それも、ちゃんと理由あり。

とにかく、これってホラー≠ナすよね、三津田さん???
特に、一人、また一人と、殺されていく中で、シェルター内に入れなかった火照陽之助が、扉を叩いている・・・? と言うあたり、すごく怖いです。

同じくクローズド・サークル系米澤穂信「インシテミル」は、疑心暗鬼だらけ(?)だったけど、この作品は、そこの部分はあっさりしてました。

で、ミステリとしては、連続して起こる密室殺人は、どれも機械トリックだし、ラストは、驚愕の!!!まさかまさかの夢オチなので、読みどころは、恐怖感いっぱいのホラー部分(夢のシーンとか、)と、三津田&星影のエンドレス・イタリアン・映画談義!!

なーんてね。
そうは言っても、ミステリ部分の、伏線の細やかさと、回収は、いつもながらの素晴らしさです。
なのに、どうして、あんなラストにしちゃうかなあ・・・

(話は違うけど、189ページの、三津田さんが、ゾンビものに余り関心がない、というのはショックでした・・・)
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2008年03月24日

「秋の牢獄」恒川光太郎

秋の牢獄

著者名:恒川光太郎(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.11
ISBN :9784048738057


恒川光太郎「秋の牢獄」は、表題作、「神家没落」「幻は夜に成長する」、三作共に、
本書のタイトル「秋の牢獄」に相応しく、独特の雰囲気を持ち、叙情性に富み、そして、囚われの物語。。。

幻想小説っぽく、ミステリとは言えないけれど、たまには、こんなのもいいかも。

お話は・・・
十一月七日、水曜日。女子大生の藍は、秋のその一日を何度も繰り返している。毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。朝になればすべてがリセットされ、再び十一月七日が始まる。彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか―。まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる文体。心地良さに導かれて読み進んでいくにつれて、思いもかけない物語の激流に巻き込まれる―。数千ページを費やした書物にも引けを取らない、物語る力の凄まじさ。圧倒的な多幸感と究極の絶望とを同時に描き出す、新鋭・恒川光太郎の珠玉の作品集。

それにしても!!
「秋の牢獄」を読んで、思い起こされるのは、22ページにも出てくるケングリムウッドの「リプレイ」

藍ちゃんも、翁の面の男も、リオ様も、裸足で逃げ出すほど面白いのが「リプレイ」です。
未読の方はもちろん必読!!

ほとんど出番のなかった仲間由紀恵チャン目当てに毎週、観ていたドラマ「君といた未来のために」
初めとして、当時、パクられまくりで、世の中「リプレイ」のエピゴーネンだらけになったほどの小説。
「リプレイ」を踏まえた上での「秋の牢獄」であれば、やはり「リプレイ」が上。
(ただし、北村薫の三部作は別。すでに構想にあったらしいです)

そんな訳で、私は、「幻は夜に成長する」の怖〜いラストが好きです。
たとえ牢獄に囚われたとしても。

リプレイ

著者名:ケン・グリムウッド(著)
杉山高之(訳)
出版社:新潮社
出版年:1990.07
ISBN :9784102325018


それよりも「夜市」!!
posted by たちばな ますみ at 08:37| Comment(4) | TrackBack(0) | 国内作家・た行

2008年03月22日

「少年検閲官」北山猛邦

少年検閲官

著者名:北山猛邦(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.01
ISBN :9784488017224


北山猛邦「少年検閲官」は、独自の世界観を構築し、その世界のルールの中での「ミステリ」を描いた物語。

最初は、なかなかファンタジーのような物語世界に入り込めず、苦労しましたが、途中からはくいくい読めました。

お話は・・・
何人も書物の類を所有してはならない。もしもそれらを隠し持っていることが判明すれば、隠し場所もろともすべてが灰にされる。僕は書物というものがどんな形をしているのかさえ、よく知らない―。旅を続ける英国人少年のクリスは、小さな町で奇怪な事件に遭遇する。町中の家々に赤い十字架のような印が残され、首なし屍体の目撃情報がもたらされるなか、クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが…。書物が駆逐されてゆく世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。

ミステリとしては、「首なし屍体」という、私の大好きなガジェット≠扱っているのに、肝心のトリックはお粗末。
まあ、トリックよりも、犯行の動機こそが主眼であり、物語世界ならではの真相がユニークです。

ただ、ひたすらにおぞましい動機であり、映画化もされたジュースキントの「香水」やエド・ゲインを思い出しましたよ、私は。

ところが、ほとんど、そんなことを感じさせない筆致で、さらりと流すところは、うまいです。

にしても。どうしてこれが、高く評価されているのかよく分かりません。
とか言いながら、作者によると、三部作らしいので、次作が出ればやっぱり読むんだろうなあ・・・
エノとクリスのその後も気になることだし・・・
posted by たちばな ますみ at 07:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・か行

2008年03月17日

「硝子のハンマー」貴志祐介

硝子のハンマー

著者名:貴志祐介(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.10
ISBN :9784041979075


まもなく出るであろう貴志祐介の青砥・榎本コンビの短編集「狐火の家」の予習として、密室ミステリ「硝子のハンマー」を読みました。

お話は・・・
日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子(あおと・じゅんこ)は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径(えのもと・けい)の許を訪れるが―。
(「BOOK」データベースより)

こんなトリック、分かるわけないですよね。
なんとなくなら分かるけど、私は、窓ガラスを外して、それを倒して頭を殴ったんだと思ってました。
まあ、読み進むうちに、こりゃ、解けないだろうなあ、という予感はありましたけど。

それより、このお話は、やっぱり殺人の動機が弱すぎですよね。。。
(ネタバレ反転)だって、ダイヤを盗めたのに、その後で、わざわざ殺すんですよ。それだけの、強いモチベーションが必要でしょう。

純子と今村の関係もよく分からず。どこかの弁護士事務所の同僚? そこらへんも、もう少し書き込んで欲しかったなあ。純子のプライベートなんかも、スカッシュとエステだけじゃなく。

全体の構成も、事件と犯人側の双方から少しずつ描いていく、例えばビル・S・バリンジャー「歯と爪」みたいにして欲しかったかも。

とりあえず、次回作「狐火の家」に期待!!
ネタバレ御免
posted by たちばな ますみ at 07:02| Comment(0) | TrackBack(1) | 貴志祐介

2008年03月14日

「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹

赤朽葉家の伝説

著者名:桜庭一樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2006.12
ISBN :9784488023935


「しゃばすぎるぜ。裸は、惚れた男にとっときな。おばさん」

桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」、ミステリだとは思わないですが、まったく関係なし、面白い!!
必読必読。

お話は・・・
“辺境の人”に置き忘れられた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の“千里眼奥様”と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。高度経済成長、バブル景気を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の姿を、比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。
(「BOOK」データベースより)

ストーリーを、くどくど書いても仕方なし。
「赤朽葉家の伝説」は、2008年のこのミス2位だったわけだけど、うーん、こんなのが、まざってたんですねえ・・・同じように警官の三代記で、このミス1位だった佐々木譲「警官の血」は、(1位にしては)大したことなかったのに、これはスゴイ作品です。
(なんと、「SFが読みたい!」でも10位にランクイン。ミステリだとは思わないし、SFだとも思えませんが、ジャンルなんかでは括れない圧倒的パワーがあります)

舞台となっている、山陰∞裏日本≠ニして島根と双璧であり、象徴みたいな、鳥取という、マイナー地域がいいんですよね。
作者の出身地だからこそ書けたというか・・・バブル景気も崩壊も、あるんだけど、どこか取り残されてる感もあるという、そのさじ加減が、絶妙。

万葉(まんよう)・毛毬(けまり)・瞳子(とうこ)の三人が愛おしい。
今年読んだベストです。
posted by たちばな ますみ at 08:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 桜庭一樹

2008年03月11日

「シャドウ」道尾秀介

シャドウ

著者名:道尾秀介(著)
出版社:東京創元社
出版年:2006.09
ISBN :9784488017347


第7回 本格ミステリ大賞小説部門受賞(2007年)
『このミステリーがすごい!2007年版』第3位
『2007 本格ミステリ・ベスト10』第6位

道尾秀介「シャドウ」をやっと今頃読了しました。

ミステリとしては、私の大好きな「向日葵の咲かない夏」に比べると、ストーリーはスッキリしてて、児童虐待的ドロドロ感も少なく(少ないだけです)、「向日葵」よりも世評が遥かに高いのも頷けます。
ただし、私はやっぱり「向日葵」LОVE63890です。

お話は・・・
人間は、死んだらどうなるの?―いなくなるのよ―いなくなって、どうなるの?―いなくなって、それだけなの―。その会話から三年後、鳳介の母はこの世を去った。父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが…。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?
(「BOOK」データベースより)

東京創元社の道尾による「ここだけのあとがき」に書かれている、前作「向日葵」に対する批判(非難めいた言葉==@陰惨、可哀想すぎるなど)を受けて書かれたのが、この「シャドウ」だとすれば、こちらの方が、評価は高くなって当たり前、というところでしょうか。

確かに、「向日葵」の陰惨さは、正直、私も最初の数ページで読むのを止めようかと思ったくらいなので、いいとは思いません。
ただ、読み終えた段階では、その陰惨さなどを凌駕するミステリとしての面白さ、トリック、伏線の妙があり、お気に入りの一冊になったことも事実です。

そんな陰惨な部分が緩和され、ミステリとしてもスッキリしたのが、この「シャドウ」
さらにミステリとしても洗練され、「シャドウ」よりも後味も良くなったのが、最新作「ラットマン」ですね。。。

でもしかし、確かに「シャドウ」は、いいです!
道尾お得意の抜群のミスリーディングで、ぐいぐい読者を引っ張っていき、ラストで2転3転のツイストを連発する。

特に、三人称多視点での叙述での、アンフェアすれすれの細かい伏線(読み直さなければ分からないような伏線もいっぱい!!)と、丁寧な回収ぶりには、頭が下ります。
(例えば、P169の最後の傍点部分。洋一郎の田地に対する気持ちの俺は正常だ。おかしいのはこいつだ。この老いぼれがおかしいんだ―――≠ネどなど)

主人公・我茂凰介(がも・おうすけ)の守られるものから、守るものへ…という成長の部分さえもストーリーに密接に絡ませていくあたりホントに上手いです。

向日葵の咲かない夏

著者名:道尾秀介(著)
出版社:新潮社
出版年:2005.11
ISBN :9784103003311


ネタバレ御免
posted by たちばな ますみ at 13:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 道尾秀介

2008年03月07日

「犯罪ホロスコープT 六人の女王の問題」法月綸太郎

犯罪ホロスコープ 1

著者名:法月綸太郎(著)
出版社:光文社
出版年:2008.01
ISBN :9784334076665


法月綸太郎による星座にまつわる短編集「犯罪ホロスコープT 六人の女王の問題」

お話は…
売れっ子ライター・虻原がマンションから転落死した。そのマンションには、虻原もかつて所属していた劇団の主宰者が住んでいた。最近、その劇団の芝居を巡り、二人には感情のもつれがあったらしいのだが…。虻原は、寄稿した雑誌の最終回のコラムに不可解な俳句を二首、残していた。さらに「六人の女王にたずねるがいい」という謎のメッセージが。はたして、俳句に隠された謎とは?(表題作)星座にまつわる六つの謎を解き明かす、まさに端正な本格推理。
(「BOOK」データベースより)

「著者のことば」の、気楽に読んで愉しめる、そして後にはいっさい何も残さない≠ニあるように、6篇ともカッチリした本格もののミステリで、楽しめました。

が、いろんな方のブログで評価の高い「ゼウスの息子たち」は、どうなんでしょ?
(ここからネタバレ)たまたま二組の二卵性双生児のカップルがいて、片方が達也と香織、片方が沙織と和也という名前なんて・・・名前がクロスするようにそろえてあるのは、生まれた時から両家の息子と娘たちを結婚させようという、親たちの意志が働いていたからだと思います≠ネんて言われても・・・って皆さんは思わない? 私だけ?

表題作の暗号ものの「六人の女王の問題」にしても、難しすぎでとても解けません。(あることに対する知識がないと)
分かる人なら、暗号である二首の俳句

琵琶法師 手を暖めし 羽子板星
白衣の裏 死の遊びさえ 虚ろかな


とタイトルだけでも解ける暗号なので、良ければ頑張ってみて下さい。

などと言いつつ、不自然なあるものの数から犯人を特定する「ヒュドラ第十の首」、都市伝説が最後にはキレイに解決される「冥府に囚われた娘」など、しっかり楽しませていただきました。
posted by たちばな ますみ at 07:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・な行

2008年03月05日

「ブラック・ジャック・キッド」久保寺健彦

ブラック・ジャック・キッド

著者名:久保寺健彦(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.11
ISBN :9784103059714


たまにはミステリ以外のものも、てなわけで久保寺健彦「ブラック・ジャック・キッド」です。

手塚治虫の名作『ブラック・ジャック』をこよなく愛する小学生の和也。「患者」を探して団地を駆け回る毎日にも、否応なく現実ってやつが影を落とす。両親の離別、転校、いじめ…。そんな和也に、少女マンガに夢中の宮内君と、眼鏡を外すと超綺麗な泉さんという親友ができて…。恐るべき新人が描く、ほろりと切ない青春小説の傑作!第19回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)

かわいい表紙の装画を見てもお分かりの通り、小学3年生にしてブラック・ジャックになりたかった℃蜷l公、織田和也くん。

ネコやフナの死骸を解剖したりする最初の方は、久しぶりに大爆笑!!

「やりなよ、アッチョン」
ギクッとして顔を上げたら、上野がこっちをジッと見ていた。
「せっかく見つけたんだから、オペしなよ」


一応、日本ファンタジーノベル大賞で賞を取ってるんだけど、一体どこがファンタジー? と思うほど、ファンタジー、SF味は希薄です。
まあ、和也くんが、両親の離婚、引越し、いじめなどを経験しつつ、だんだんオトナになってく過程がいいです。

もちろん、「ブラック・ジャック」は読んでいた方が面白いに決まってますが、読んで無くても大丈夫。
他に、「ガラスの仮面」や「エースをねらえ!」なんかも(名前だけですが)出てきます。

(アッチョン≠ヘ、ピノコの口癖のアッチョンブリケ!≠ゥらきた和也のあだ名です)
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2008年03月03日

「倒立する塔の殺人」皆川博子

倒立する塔の殺人

著者名:皆川博子(著)
出版社:理論社
出版年:2007.11
ISBN :9784652086155



わたしの目的は貴方に読ませることだけだったのに。
扉の、蔓薔薇模様。そうしてタイトル。丹念にあれを描いていたときの自分を、思い出す。


皆川博子という作家は、映画「写楽」の或るシーンを観て以来、読まず嫌いになってしまい、「巫女」という短編集しか読んだことがなかったんですが、この「倒立する塔の殺人」は、面白く読めました。

なんと言っても、私の好きな作中作∞入れ子構造の物語。

戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、物語は驚くべき結末を迎える…。物語が物語を生み、秘められた思惑が絡み合う。万華鏡のように美しい幻想的な物語。
(「BOOK」データベースより)

実際は、この作中作&舶ェは、虚構が現実を蝕んで、現実が虚構となる・・・みたいな複雑な構造ではありませんでした。

このお話、面白いし、こういうの好きです。
でも、ミステリかって聞かれると・・・? 「倒立する塔の殺人」って作中作の物語で、ミステリ的な部分もあるんですが、そこはシンプル。
(ネタバレ反転)ラストで設楽久仁子が書き足したちょっとしたこと&舶ェが怖かったです。

面白いのは、桜庭一樹「青年のための読書クラブ」を思い出させる、阿部欣子、三輪三枝(さえだ)、設楽(しだら)久仁子たちの、戦中・戦後の時代にも負けない生き方。戦争より友人達との人間関係の方が大切なわけですね。。。

それと、表紙装画の佳嶋さん、ステキですねえ。
(巻末にある、エゴン・シーレも、いいなあ・・・)
posted by たちばな ますみ at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・ま行