2008年02月29日

「扉は閉ざされたまま」石持浅海

扉は閉ざされたまま

著者名:石持浅海(著)
出版社:祥伝社
出版年:2008.02
ISBN :9784396334062


「2006年版・このミステリーがすごい!」で第2位になった(1位は「容疑者Xの献身」)、石持浅海「扉は閉ざされたまま」

面白い!!
巻頭いきなり殺人があって、犯人の立場から描かれる、倒叙ものミステリ(そう言えば「容疑者Xの献身」も倒叙もの)なわけですが、さすがは石持浅海、一味も二味も違います。

久しぶりに開かれる大学の同窓会。成城の高級ペンションに七人の旧友が集まった。(あそこなら完璧な密室をつくることができる―)当日、伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。何かの事故か?部屋の外で安否を気遣う友人たち。自殺説さえ浮上し、犯行は計画通り成功したかにみえた。しかし、参加者のひとり碓氷優佳(うすい・ゆか)だけは疑問を抱く。緻密な偽装工作の齟齬をひとつひとつ解いていく優佳。開かない扉を前に、ふたりの息詰まる頭脳戦が始まった…。
(「BOOK」データベースより)

「倒叙もの + 安楽椅子探偵もの + クローズド・サークル」という、今までにない、(実際に読まないと意味がよく分からないかも知れませんが)オリジナリティあふれる本格ミステリです。
ノン・ノベル版の<著者のことば>は、読者の本格ごころをくすぐりつつ、作者としての自信にあふれたことばになっています。

「鍵のかかった扉を、斧でたたき壊す」
本格ミステリの世界にはよくあるシーンです。
「そうではない」話を書こうと思いました。
閉ざされた扉を前にして、探偵と犯人が静かな戦いを繰り広げる。
この本に書かれているのは、そんな物語です。
対決の立会人はわずかに四人。
あなたが、五人目です。


そりゃあ、動機がどうとか、ラストがどうとか、表紙の絵がどうとか、ご飯粒がどうとか、優佳ちゃんに萌えない(?)とか、言い出したら、いろいろありますよ、確かに。
(動機に関しては、その弱さを補強するためなのか、最近出た文庫版には「前夜」と題した前日譚が書き加えられていますが、こんなものは不要だと私は思ってます。)

それらもろもろを、差し引いても、この「扉は閉ざされたまま」は、ミステリとして面白いし、魅力的です。
密室殺人≠ナある必然性と、動機とのリンク、伏線山盛りの「序章」、探偵役の優佳ちゃんの冷徹な推理と犯人・伏見との静かなる戦い・・・

ここまで面白くて、独創性ある作品に、ちまちまとケチを付けてたら、年間ベストなんて選べません。
それとも私はやっぱり本格ミステリに甘いんでしょうか??
(確か、私は「月の扉」の時にも同じことを書いたような気がするんですが・・・まあ、ケチを付けたらダメって訳じゃありませんけどね)

ところで、3月に出る、続編の「君の望む死に方」はその優佳ちゃんが引き続き探偵役だそうで、これも楽しみですね。
WОWОWのドラマでは、「扉」では、黒木あずみ<<Cサが、「君」では松下奈緒
が、それぞれ優佳ちゃんを演じるそうです。
私のイメージとしては、星野真里ちゃんです。(米澤穂信「犬はどこだ」のヒロイン役も)
どんなもんでしょう?

io星野真里写真集

著者名:野村誠一(写真)
出版社:ワニマガジン社
出版年:2001.12
ISBN :9784898298350

posted by たちばな ますみ at 06:42| Comment(2) | TrackBack(1) | 石持浅海

2008年02月25日

「新世界より」貴志祐介

新世界より 上

著者名:貴志祐介(著)
出版社:講談社
出版年:2008.01
ISBN :9784062143233


新世界より 下

著者名:貴志祐介(著)
出版社:講談社
出版年:2008.01
ISBN :9784062143240



「最後の最後に世界を反転させる。それもSFの醍醐味(だいごみ)です」貴志祐介

2004年の「硝子のハンマー」以来、3年半ぶりの貴志祐介の新作長編「新世界より」
突っ込みどころ満載ですが、とにかく面白い。SF好きの人も、嫌いな人も、必読!!

1,000年後の日本。神栖(かみす)66町をはじめとした9つの町にしか人の住まなくなった日本では、人は「呪力」を持ち、子供たちを徹底した管理の下に置いていた。
「和貴園」に通う、十二歳の渡辺早季、青沼瞬、秋月真理亜、朝比奈覚(さとる)、伊東守の五人は、夏季キャンプで、出てはならない八丁標(はっちょうじめ)の外の世界で人生を変える出来事に遭遇する・・・

悪鬼、業魔、バケネズミ、不浄猫、風船犬、ミノシロモドキ、フクロウシ等など・・・めくるめくイマジネーションの洪水。
悪鬼とは何か? 業魔とは何か? その他、過剰とも思える書き込み、作り込みも、読み進めていくうちに、必要不可欠だったということが分かってきて、物語の面白さ、世界観を広げていきます。

とにかく、未読の方は、本屋へGО!!
(感想は、読了後、「ネタバレ御免」を読んで下さいね)
ネタバレ御免
posted by たちばな ますみ at 18:25| Comment(2) | TrackBack(0) | 貴志祐介

2008年02月21日

「温かな手」石持浅海

温かな手

著者名:石持浅海(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.12
ISBN :9784488024338


「橘高(きったか)さんが、なぜ畑さんの白衣を着て死んでいたのか。研究室には自分の白衣もあったのに」
ギンちゃんはそう言った。
「その意味を考えれば、犯人はわかります」


いいでしょう!? この書き出し。(「白衣の意匠」
本格好きの私は、この一文だけで、ウットリしてしまいます。

お話は・・・
大学の研究室に勤める畑寛子の同居人・ギンちゃんは名探偵。サラリーマンの北西匠の同居人・ムーちゃんも名探偵。人間離れした二人は、彼らが遭遇した殺人事件や騒動を、鮮やかに解き明かす!一風変わった名探偵とそのパートナーが活躍する、著者渾身の連作集。
(「BOOK」データベースより)

このギンちゃんと、ムーちゃん、私は最初、表紙の絵から考えて、ギンザメとエイのことだと思ってました、勝手に。(←ムー≠ニエイ≠ヘ、何の関係もないし、表紙にもエイの絵が描かれているわけでもないのに・・・)

まあ、彼らが何者かは、内緒なので、読んでいただくとして、(とは言え、すぐに分かるんだけど)こういう設定自体、必要なのかな? と思いつつ読んだのですが、東京創元社の石持浅海本人によるここだけのあとがき≠読めば、その必要性が分かります。(でも、必要か???)

例によって、本作も、謎解きのロジックが楽しい。
冒頭の「白衣の意匠」、自殺と殺人の謎「陰樹の森で」、ムーちゃんと痴漢の話「酬い」、陸(おか)マイラーの謎の死「大地を歩む」、そして、男がサービスエリアで消えた謎を解くロジックが面白い「お嬢さんをください事件」の5編は、どれも、少ない手掛かりから、推理をすすめて、展開される、石持節全開の危ういロジックがファンには最高です。

最後の表題作「温かな手」は、最後に、ちょっとしんみりするお話。
続編を書いて欲しいなあ…と思わせるところはさすがです。

石持ファンは、必読でしょう。
posted by たちばな ますみ at 09:09| Comment(2) | TrackBack(0) | 石持浅海

2008年02月18日

「ラットマン」道尾秀介

ラットマン

著者名:道尾秀介(著)
出版社:光文社
出版年:2008.01
ISBN :9784334925932


道尾秀介の新作「ラットマン」は、幼児虐待もちょっぴりあったりはするんだけど、評判通り道尾最高作かも。
(すみません、私、「シャドウ」すら未読なので、断言できません)

タイトルのラットマン≠ニは、認知心理学では有名なイラストで、「ソロモンの犬」のあれみたいなものか…と、思ってたんですよ、最初は。

ところが、このラットマン≠ヘ、単純に錯覚のみならず、トリック、ストーリーなどなど、幾重にも絡んできて、その構成、トリック共に、素晴らしいまとまり具合。いいです。

ストーリーは、14年間もアマチュアバンドをやっている姫川亮や、小野木桂(おのぎ・けい)たちが練習中にスタジオで、ある事件に遭遇します。このスタジオでの事件と、過去に姫川が出会った事件が交錯していく中で、心地良いまでのラストが待ち受けています。

とにかく、うまい! きれい!!
いつもの如きツイストの連続と、ラストの決め方も絶妙、青春ものとしてのストーリーも、読ませます。

とは言え、私は、反則スレスレの、「向日葵の咲かない夏」の方が、(初めて読んだ道尾作品ということもあるとは思いますが)やっぱり好きなんですが、作品自体の完成度、一般受けのしやすさ、トリックの美しさすべての点において、「ラットマン」は素晴らしい。

必ずや年末のランキング上位に食い込んでくると思います。
(でも、今年中に、これを凌ぐような作品を書けば、票が割れちゃうかもしれませんが・・・)
posted by たちばな ますみ at 08:25| Comment(2) | TrackBack(0) | 道尾秀介

2008年02月12日

「アイの物語」山本 弘

アイの物語

著者名:山本弘(著)
出版社:角川書店
出版年:2006.06
ISBN :9784048736213


山本弘「アイの物語」、図書館に昨年の4月に予約して、やっと順番が回ってきました…。

アイはアイビスの愛称。それは「I(私)」であり、「AI(人工知能)」であり、「i(虚数)」であり、「愛」である。

人類が衰退して大都市は廃墟と化し、マシンが世界に君臨している遠い未来。「語り部」と呼ばれる僕は、食糧を盗んで逃げる途中、美しい少女型の戦闘用アンドロイドと出会い、戦いの末に負傷して捕えられる。
 病院に収容された僕に、アイビスと名乗るアンドロイドは、仮想現実や人工知能を題材にした6つの物語を、毎日読んで聞かせる。時代も境遇も性格も異なる6人の女性「私」による一人称の物語。それらはいずれもフィクション――現実には起こらなかったことだという。
 はたして物語を聞かせるアイビスの真意は何なのか。なぜアイビスは生まれたのか。なぜマシンは地球を支配するようになったのか。彼女が語る7番目の物語に、僕の知らなかった真実が隠されていた。

ロボットものの本書を読みながら、連想するのは、もっぱらアイザック・アシモフによる「われはロボット」「鋼鉄都市」などの物語ばかり。

特に、最後の第7話「アイの物語」は、アシモフの名作「バイセンテニアル・マン」(「アンドリューNDR114」のタイトルで映画化もされました)を思い出しながら、読みました。
「バイセンテニアル・マン」は1976年に発表された作品なので、30年以上が経っていて、扱っているテーマは違えど、アシモフの「ロボット工学三原則」を破ろうとするロボットの物語という意味では同じです。

どちらのロボットも、切なく、ロボットゆえの孤独と悲哀を感じました。

それにしても、雑誌に掲載された軽めの前半5編と、じっくり読ませる書下ろしの「詩音が来た日」「アイの物語」の後半2編の全7編で、6話目までは、フィクションで、最後の1話だけが本当の話で、すべての物語に、それぞれ語られるべき意味があったという構成は素晴らしいですね。

最後になりますが、ミステリ好きの私としては、「アイの物語」のラストの、(ネタバレ反転)キャラクターを育ててるはずが、逆に育てられてたというのが、きれいなツイストで気持ちよかったです。
われはロボット 決定版

著者名:アイザック・アシモフ(著)
小尾芙佐(訳)
出版社:早川書房
出版年:2004.08
ISBN :9784150114855


聖者の行進

著者名:アイザック・アシモフ(著)
池央耿(訳)
出版社:東京創元社
出版年:1979.03
ISBN :9784488604073



「バイセンテニアル・マン」は、「聖者の行進」に収録されています。
「われはロボット」は、傑作短編集で、ミステリ好きの方なら絶対読むべし!!(映画「アイ、ロボット」の原作ではありません。設定を借りた、くらいなものです)
posted by たちばな ますみ at 04:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・や行

2008年02月06日

「見下ろす家」「よなかのでんわ」「赫眼」三津田信三

今日は、三津田信三の短編をまとめて三作、紹介します。
いずれも光文社文庫の井上雅彦監修「異形コレクション」というテーマ別アンソロジーのために書き下ろされた短編です。

まず、三津田信三と言えばオバケヤシキ!!という訳で、異形コレクション「オバケヤシキ」の中の一編「見下ろす家」は、小学3、4年生の僕≠ェ友人たちと、近所の怪しい家に忍び込むお話。
(今年は、新作長編でまたオバケヤシキものを出すらしいですね。)

「よなかのでんわ」は、同じく異形コレクション「闇電話」の一編で、電話での会話形式で進められるお話。
東城雅哉(言耶)の名前が出てきます。

そして最後の「赫眼」(あかまなこ)は、異形コレクション「伯爵の血族 紅ノ章」という、タイトルからお分かりの通り、<吸血鬼>(ヴァンパイア)がテーマの一編。

みなさん、三津田信三は、吸血鬼もOKです!! 怖いです!!

伝統的な吸血鬼もののお約束(にんにくも出ますし、吸血鬼は、その家の人に招かれなければその家に入ることができない、というお約束も効果的に使用されてます)を踏襲しつつ、(少し前の)現代日本を舞台にして、恐怖を盛り上げていきまーす!!

その女の子の名前は、目童(まどう)たかり。名前からしてやばそうでしょ?
語り部の回想として二人称で語られるのですが、ラストになってその理由が分かります。。。
怖いですよ、このお話。
今回の短編三作の中ではピカイチの面白さ、怖さです。

オバケヤシキ

著者名:朝松健(著)
出版社:光文社
出版年:2005.08
ISBN :9784334739317


闇電話

著者名:浅暮三文(著)
出版社:光文社
出版年:2006.05
ISBN :9784334740665


伯爵の血族 紅ノ章

著者名:朝松健(著)
出版社:光文社
出版年:2007.04
ISBN :9784334742317

posted by たちばな ますみ at 00:39| Comment(4) | TrackBack(0) | 三津田信三