2007年12月25日

「クリスマス・イヴの惨劇」スタンリイ・エリン【本日の短編・6】

クリスマス12のミステリー

著者名:I.アシモフ(編集)
池央耿(訳)
出版社:新潮社
出版年:1985.10
ISBN :9784102186039


今日は、【本日の短編】クリスマス・スペシャルということで、短編の名手スタンリイ・エリン「クリスマス・イヴの惨劇」を紹介します。

決して後味が言い訳ではないので、読んだことのある方からは、クリスマス・ストーリーとしてはどうなの? という声も聞こえて来そうですが、クリスマスという言葉から真っ先に連想したのが、強烈なインパクトを持ったこの、エリンの短編。

スタンリイ・エリンという作家は、1年に短編を1作しか書かないことでも有名で、それだけに1作1作が切れ味鋭く、(ツイストが多いと言うわけではありません)心理描写も素晴らしいです。
そのエリンの描く、取って置きのクリスマス・ストーリー。
是非、読んでみて下さい。
短編ですし、どんなストーリーかは書きませんが、初読の時の衝撃は未だに忘れられません。


この「クリスマス・イヴの惨劇」は、新潮文庫の「クリスマス12のミステリー」(私が読んだのはこちらが先だけど、こちらは本屋さんにはもうないかも)もしくは、早川書房の「異色作家短篇集 11 特別料理」(こちらでは「クリスマス・イヴの凶事」のタイトル)で読めます。

前者は、アシモフによるクリスマス・ストーリーのアンソロジー。後者はエリンの短編集で、
どちらも楽しいです。(前者では、日本では無名ですがニック・オドノホウという作家の「煙突からお静かに」という短編も必読。こちらはユーモア系です)

特別料理

著者名:スタンリイ・エリン(著)
田中融二(訳)
出版社:早川書房
出版年:2006.07
ISBN :9784152087416

posted by たちばな ますみ at 04:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 本日の短編

2007年12月17日

「ぶち猫 コックリル警部の事件簿」クリスチアナ・ブランド

ぶち猫

著者名:クリスチアナ・ブランド(著)
深町眞理子(訳)
出版社:論創社
出版年:2007.10
ISBN :9784846007522


解説の山口雅也は、手放しでこのクリスチアナ・ブランドの短編集、「ぶち猫」を褒めてはいるけれど、やはり1990年に創元推理文庫から出された「招かれざる客たちのビュッフェ」とは比べ物にならなりません。

とは言え、コックリル警部の長編を除いて、「ビュッフェ」とは重複しないように編まれたのがこの「ぶち猫」なのだから、仕方ないと言えば、仕方ない。(先に編んだものの方が強いに決まってる!)

「ぶち猫」は、「ビュッフェ」クラスの作品ではないと、分かりつつも読んでしまったのは、やはり、あの「緑は危険」「ジェゼベルの死」ブランドの作品だから。

この中では、全ページの2分の1以上を占める戯曲の「ぶち猫」が、スリリングで面白かったです。
じゃあ、「ビュッフェ」の中の、「スケープゴート」と比べてどうかって?
だから、比べちゃダメですって!!
(今度、【本日の短編】で、例の短編、取り上げますからね…)
posted by たちばな ますみ at 08:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外作家

2007年12月12日

「沈底魚」曽根圭介

沈底魚

著者名:曽根圭介(著)
出版社:講談社
出版年:2007.08
ISBN :9784062142342


第53回江戸川乱歩賞受賞作。

沈底魚(スリーパー)=@= 何年もの間、一市民として暮らし、指示があると工作員として活動を始める。

お話は・・・
大物の沈底魚が、日本に潜っている。亡命中国外交官による衝撃情報。流出した国家機密。「眠れるスパイ」は実在するのか。公安刑事たちの極秘捜査が始まった!乱歩賞史上、もっともスリリングな公安ミステリー、堂々登場!
(「BOOK」データベースより)

エスピオナージの常として、・・・と思わせて実は・・・と思わせて実は・・・(以下繰り返し)的な展開は仕方無いのかもしれません。

それでも、昔読んだル・カレのエスピオナージなどに比べると、ストーリーも分かりやすく、人物もこんがらがってこないし、面白く読めました。

エスピオナージとしては逆に、スッキリしすぎているくらいかも。300ページほどだし。
(ル・カレは、何がどうなっているのか??? 訳が分かりませんでしたけど…)
もちろん、そこまでとは言いませんが、いろんな面で、もう少し書き込んでくれないと、物語に深みが出ない気がします。(分かりやすくていいけど)

それでも、主人公の不破に組織内で敵対する五味や、不破の同僚で人付き合いが下手で、一途なところのある若林のキャラクターが印象的で良いです。
posted by たちばな ますみ at 08:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・さ行

2007年12月10日

「雲上都市の大冒険」山口芳宏

雲上都市の大冒険

著者名:山口芳宏(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.10
ISBN :9784488023973


第17回鮎川哲也賞受賞作。
今年一番のバカミス。

お話は・・・
白のスーツを身にまとう眉目秀麗な荒城咲之助、学ラン姿に近未来的な義手を持つ真野原玄志郎。二人の名探偵と、わたし殿島直紀が挑む雲上都市の謎。楽園の地下に潜む、座吾朗とは何者なのか?そして連続殺人に隠された真実とは?気障で美形の探偵&わらしべ義手探偵。二人の名探偵が織りなす抜群の物語性と、ラストに明かされる驚愕のトリック。
(「BOOK」データベースより)

確かに、密閉された地下牢からの脱出は、驚愕のトリック≠ゥも知れませんが、(ネタバレ反転)
これって、脱出してませんよね? その意味でトリックにすらなってないと思うんですが・・・

作者は、様々な義手をアタッチメントで使い分ける真野原の方で、シリーズ化しようとしてるみたいだけど、探偵二人も必要だったのかなあ・・・
それはともかく、私は観念して、拘束されている犯人の顔を足蹴にするような探偵も作者も嫌いです。

ところで、私は読み始めてから、巻末の選評を読んだんですが、これがまた、読む気をなくすようなのばかり。

笠井潔曰く、
全体として、水準も低下しているように感じる

島田荘司は、
今年は低調であった。

山田正紀も、
(最終選考に残った作品が三篇しかなかったのは)今回は全体的に低調だったということらしい。(中略)それは最終選考に残った三篇の作品からも容易に推察できることだった。

以上、あまりオススメしません。
posted by たちばな ますみ at 10:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・や行

2007年12月04日

「長く冷たい眠り」北川歩実

長く冷たい眠り

著者名:北川歩実(著)
出版社:徳間書店
出版年:2007.06
ISBN :9784198623425


まずはじめに、本書の短編の共通テーマである冷凍睡眠(コールド・スリープ)という言葉から、まず連想したのは、
護民官ペトロニウスでした。

書き下ろし1篇を含む7編の短編集ですが、そのどれもが多少なりとも、冷凍睡眠を扱っているわけですが、SF的なところはまったくなく、どれもが少し重ためのミステリです。

冷凍睡眠と言っても、詐欺の手段に使われていたり、カルト教団で極秘に実験が行われているらしい、などといった形での扱いです。
(というか、どの作品でも、否定的なニュアンスでしか取り上げられていません)

7編の中では、「素顔に戻る朝」が素晴らしい!!
短編にしてしまうには、もったいない!! この顔無し死体のトリックは、長編にしてじっくり描いて欲しかったです。
(私は北川弘実は初読みなんですが、本格の作家ではない?)

ネタバレになるので詳しくは書けないものの、何故、首を切ったのか?≠ニいうホワイダニットに対して、あまりにも、簡単に答えを出しすぎてます。
(読めば分かりますが、答えが先に出てるんです!!)

どのくらいもったいないのか、みなさんも一度、読んでみて下さい。
特に本格好きの方。

ところで、冒頭の護民官ペトロニウスは、もちろんハインラインの不朽の名作「夏への扉」の猫のピートくんのこと。
ここでは、くどくど書かないので、未読の方(これから読めるなんて羨ましい!!)は、是非冬休み中に読んで下さい。
たちばなからの宿題です。

夏への扉

著者名:ロバートA.ハインライン(著)
福島正実(訳)
出版社:早川書房
出版年:1979.05
ISBN :9784150103453

posted by たちばな ますみ at 09:04| Comment(4) | TrackBack(1) | 国内作家・か行

2007年12月03日

「有頂天家族」森見登美彦

有頂天家族

著者名:森見登美彦(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2007.09
ISBN :9784344013841


「それは阿呆の血のしからしむるところだ」
我々兄弟が何か悪さをして騒ぎを起こすたびに、父はそう言って笑ったものだ。


これ、全然ミステリではないけれど、面白いです。初モリミーの「有頂天家族」

お話は・・・
糺ノ森(ただすのもり)に住む狸の名門・下鴨家の父・総一郎はある日、鍋にされ、あっけなくこの世を去ってしまった。遺されたのは母と頼りない四兄弟。長兄・矢一郎は生真面目だが土壇場に弱く、次兄・矢二郎は蛙になって井戸暮らし。三男・矢三郎は面白主義がいきすぎて周囲を困らせ、末弟・矢四郎は化けてもつい尻尾を出す未熟者。この四兄弟が一族の誇りを取り戻すべく、ある時は「腐れ大学生」ある時は「虎」に化けて京都の街を駆け回るも、そこにはいつも邪魔者が!かねてより犬猿の仲の狸、宿敵・夷川家の阿呆兄弟・金閣&銀閣、人間に恋をして能力を奪われ落ちぶれた天狗・赤玉先生、天狗を袖にし空を自在に飛び回る美女・弁天―。狸と天狗と人間が入り乱れて巻き起こす三つ巴の化かし合いが今日も始まった。
(「BOOK」データベースより)

とにかく、下鴨四兄弟も、夷川の阿呆兄弟も、その他大勢のキャラも立ちまくりで、いつまでも読んでいたいと思わせる楽しさです。
登場人物すべてが、かわいらしくて、憎めないヤツばかりだし、最終章においては、四兄弟のそれぞれの活躍にほろっときてしまいました・・・。

モリミー恐るべし。
面白いとは聞いてましたが、他の本も読んでみることにします。

ところで、冒頭で、ミステリではない≠ニ書きましたが、狸鍋にされてしまった父・総一郎の死の謎を解くミステリと言えなくもありません。(ちょっと強引ですけど)

第二部もあるそうなので(第一話は「二代目の帰朝」)、今から楽しみです。
posted by たちばな ますみ at 13:45| Comment(3) | TrackBack(1) | 国内作家・ま行