2007年10月30日

「1950年のバックトス」北村 薫

1950年のバックトス

著者名:北村薫(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.08
ISBN :9784104066063


北村薫による、1995年から2007年にかけて発表された短編23。
巻頭の「百物語」から「包丁」まではホラーテイストです。(特に「包丁」は恐かったです)

ホラーの次に、落語調の軽い語りの「真夜中のダッフルコート」を持ってくるあたりは、さすがは名アンソロジスト! と思わせる構成。

続いての、「昔町(むかしまち)」は、アニメ映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」を思わせる、ノスタルジーに浸ってしまう一編。
「昔町」が好きな人って結構、多そう…)

メインが、20ページ程度の短編にしておくのが惜しいような内容の、表題作「1950年のバックトス」で、私は、ほろりときてしまいました。。。

駄洒落だけの「洒落小町」や、タイトルが楽しい「百合子姫・怪奇毒吐き女」もありますが、全体的には、いい話系のものが多かったので、ちょっと物足りなかったです。
ミステリ作家北村薫には、どうしても、もっともっと、過度の期待をしてしまいます。
クレしんの映画と言えば・・・
posted by たちばな ますみ at 06:55| Comment(2) | TrackBack(1) | 北村 薫

2007年10月26日

「スレドニ・ヴァシュター」サキ 【本日の短編・1】

ザ・ベスト・オブ・サキ 1

著者名:サキ(著)
中西秀男(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:1988.06
ISBN :9784480022295


今日から、新しい試みとして、ミステリの短編小説の紹介をしていきたいと思います。
本当は、毎日1冊読んで、毎日更新したいんですが、私の読書力では、とても無理。。。
そこで、今年読んだ(あるいは過去に読んだ)国内外の短編小説の中から、私の気に入っているものを、紹介していこうという企画です。
基本的に、短編集の中の、1編なので、立ち読みとか、図書館で借りたりして、気楽に読んでもらえるといいかな、と。

題して【本日の短編】。(そのままですね…)

記念すべき第1回目は、サキ「スレドニ・ヴァシュター」

「スレドニ・ヴァシュター、どうぞひとつだけぼくの願いを叶えてください」

サキの作品は要約すれば、作品紹介にあるように残酷さとユーモア、とぼけた語り口、簡潔な文体で、心の暗部を描き出す≠ニいうものかも知れません。
確かに、この「ベスト・オブ・サキ」を通して読めば、(特にクローヴィス・サングレールを主人公としたものは)その通りですが、ほぼ、その条件を備えつつ、恐怖小説の傑作とも言えるのが、この「スレドニ・ヴァシュター」です。

コンラディンは十歳だが医者はあと5年はもつまいと診断していた。
両親はいなくて、病弱なコンラディンは、厳しい後見人の従姉との生活で、窮屈で、退屈な日々を送っていた。
そんな彼が唯一、現実逃避できるのが、暗い茂みに隠された庭の奥の物置小屋だった。
そこで彼は密かに、メンドリと大イタチを飼っていたのだが、大イタチに、スレドニ・ヴァシュターと名づけた時から、大イタチは、彼の神となり、信仰となっていく。
そして、ある日・・・

あまりにも有名な「あけたままの窓」や、人語を話す皮肉屋の猫の話「トバモリー」、ツイストの効いた「ハツカネズミ」などなど、サキらしい作品も紹介したいところですが、ユーモアよりも、恐怖小説とも言える「スレドニ・ヴァシュター」は、最初の重い一文から、ラストまで、一切無駄が無く、緊張感にあふれていて、また、主人公の立場がサキの幼年時代を思わせるとなれば、正に鬼気迫る傑作の名に相応しいと言えるでしょう。
未読の方は、是非一度、読んでみて下さい。

ところで、この「スレドニ・ヴァシュター」、今、読もうと思っても、ちくま文庫「ベスト・オブ・サキ T」は品切れ状態で、創元推理文庫「怪奇小説傑作集 2 新版 英米編」 くらいでしか読めないんですね・・・
(ネットなら買えますが、立ち読みできないし・・・)

ちなみに、私が初めてサキを読んだ新潮文庫「サキ短編集」には入っていません。
「トバモリー」も入ってませんけど、新潮文庫版は、お手軽でオススメです)

ザ・ベスト・オブ・サキ 2

著者名:サキ(著)
中西秀男(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:1988.06
ISBN :9784480022301


サキ短篇集

著者名:サキ(著)
中村能三(訳)
出版社:新潮社
出版年:1958.02
ISBN :9784102026014

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2007年10月25日

「心臓と左手 座間味くんの推理」石持浅海

心臓と左手

著者名:石持浅海(著)
出版社:光文社
出版年:2007.09
ISBN :9784334076610


石持浅海による、「人柱はミイラと出会う」「Rのつく月には気をつけよう」に続いて、またもや「安楽椅子探偵もの」です。
探偵役は「月の扉」で、鮮烈な印象を残した座間味くんです。

同じく「月の扉」の、ハイジャック事件で登場した、大迫警視から、過去の事件の話を聞き、事件の隠された真相を、座間味くんが、解明していくというもの。
事件は、テロリスト、過激派、新興宗教など、かなり特殊なものばかりです。

論理のアクロバットの楽しめるのは、新興宗教で起こった後継者争いの果ての殺人と教祖の斬られた左手の謎(表題作「心臓と左手」)や、過激派の仕掛けた罠の本当の意味は?(「罠の名前」)、ビール醸造タンクの謎(秀逸!!)(「地下のビール工場」)など、安楽椅子探偵ものの面目躍如といえるものばかりです。

ただ、本格ミステリとして、もったいなあ…と思ったのは、例えば「心臓と左手」
事件が、警察的には、すでに解決してしまっている為に、左手が斬られた本当の理由に対する推理なり、疑問がほとんど無いこと。
斬られた左手に関する推理があって、最後に座間味くんの謎解きがあれば、もっと本格として面白かったのでは、と惜しい気がしました。

それから最後に「月の扉」の続編「再会」です。
これは、座間味くんの推理に対して、好き嫌いが分かれてしまいそうな内容で、私もこれはちょっと・・・と思ってしまいました。
(まあ、座間味くんのキャラクターが、一番、際立ってはいるんですが・・・)

「月の扉」を未読の方は、この本読めば、たぶん読みたくと思うので、先に読まれることをお勧めします。(文庫化されてることだし)

月の扉

著者名:石持浅海(著)
出版社:光文社
出版年:2006.04
ISBN :9784334740450

posted by たちばな ますみ at 09:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 石持浅海

2007年10月24日

「ハッピーエンドにさよならを」歌野晶午

ハッピーエンドにさよならを

著者名:歌野晶午(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.09
ISBN :9784048737951


歌野晶午の、タイトル通りハッピーエンドではない短編集。

巻頭の、親に嫌われていると思っている女の子の話「おねえちゃん」から、もう真っ黒。本の装丁と同じく、真っ黒です。

死の臭いがプンプンする「死面」、動機が黒くて面白い「防疫」、これってアレと一緒のトリック!? と思って読んでたら、やっぱり一緒だった「尊厳、死」(ただ、こっちの方が、トリックと動機が結びついてて、私はスキ)などなど、イヤな話・・・と思いつつも最後まで、結構楽しく読めました。

特に良かったのは、ろくでなしの亭主を支える妻の話「サクラチル」
後味の悪さでは、一番かも知れませんし、某海外作家の作品にも似たようなものが、ありましたが、個人的には好みです。

どの話も、黒いんですが、ラストのツイスト自体が、さらに黒くて、黒さのスパイラル状態といった一冊でした。。。
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2007年10月23日

「サクリファイス」近藤史恵

サクリファイス

著者名:近藤史恵(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.08
ISBN :9784103052517


泣けました。
泣けるって聞いてたのに、泣いてしまいました。

各方面絶賛の近藤史恵「サクリファイス」
やっぱりよかったです。

ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。

前半は、スポーツ・ドラマ。自転車ロードレースのチームで戦う白石誓(ちか)。
競輪じゃなくて、ツール・ド・フランスみたいな一般道を走り、エースを勝たせる為に、アシストが、前を走って風除け役になったりして、チームの勝利を目指すのが、ロードレース。

自分が勝つことにこだわれない、、チームのエースを勝たせる為に犠牲になるアシストに徹するアシスト役の誓と、野心を持ち続けるチームメイトの伊庭との対比も面白いです。

後半は、エース石尾が関わった、過去のある事件の謎を中心に、誓の元彼女の初野香乃(はつの・かの)や、過去の事故で車椅子生活を余儀なくされている袴田たちを巻き込みながら展開していきます。

そして、ラストで真実が明らかになり、鮮やかに浮かび上がる「サクリファイス」の本当の意味。。。

この作品は、純粋なミステリとは言えないかも知れませんが、それまでのレースで起こった様々な出来事が伏線として、最後に一つに収斂していくカタルシスは、まさに本格ミステリの醍醐味。
押し寄せる感動の波状攻撃(?)が素晴らしすぎます。

ロードレースなんか知らない、興味ない、という人も、是非、読んでみて下さい。ネタバレです
posted by たちばな ますみ at 10:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・か行

2007年10月19日

「女王国の城」有栖川有栖

女王国の城

著者名:有栖川有栖(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.09
ISBN :9784488012274


傑作「双頭の悪魔」以来、15年7ヶ月ぶりの学生アリスシリーズの第四作目にあたる
「女王国の城」
ハッキリ言って、前三作の内容は、あまり(ほとんど?)覚えてません。。。
「双頭の悪魔」が、とんでもない傑作だったことを除いて。

舞台は、急成長の途上にある宗教団体“人類協会”の聖地、神倉。大学に顔を見せない江神部長を案じて、推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、そして就職活動中の望月、織田も同調、四人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。“城”と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、思いがけず殺人事件に直面。外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し…。江神シリーズ待望の書き下ろし第四長編。
(「BOOK」データベース)

長いんです、これ。
「緑魔の町」や「プリズナーbU」など不思議なマチものの話も長すぎるし。本筋に関係してこないし。

それでも「読者への挑戦」から後の、解決篇は、江神先輩の独壇場。
11年前の未解決事件、今回の事件、そして「エピローグ」の三段構えの、それぞれにリンクした謎解きは心地いい。
特に、拳銃を、いつ、誰が、どうやって持ち込んだのか?と、「エピローグ」が素晴らしい。

ただ、犯人の条件と、それを絞り込んでいくプロセスは面白いけれど、犯人や、その動機には魅力がないです。(江神さん、ごめんなさい)
やたらと多い見取り図も、本格ファンとしては嬉しいものの、謎解きには関係なし。
(とは言え、見取り図の全く出てこない三津田さんの刀城言耶シリーズには見習って欲しいものです。あ、P148の図は、必要ね)

とにかく、「双頭の悪魔」を未読の方は幸いである。そちらからどうぞ。「月光ゲーム」「孤島パズル」は、どっちでもよろしい。なんならこの「女王国の城」もどっちでもよろしい。
「双頭の悪魔」を読みなさい。
(まあ、「双頭の悪魔」を読めば、他のも読みたくなるとは思うけど・・・)

双頭の悪魔

著者名:有栖川有栖(著)
出版社:東京創元社
出版年:1999.04
ISBN :9784488414030

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2007年10月15日

「容疑者Xの献身」東野圭吾

容疑者Xの献身

著者名:東野圭吾(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2005.08
ISBN :9784163238609


「容疑者Xの献身」なんて、今更恥ずかしいんですが、やっと読了しました。
これ、叙述トリックだと聞いた覚えがあったんですが、読んでて、違うのね・・・と思ってたんですが、そういうことだったんですね。

大仕掛けなメイン・トリックは、実に素晴らしいですが、読んでて引っ掛かる箇所はありました。(ネタバレ参照)
ありましたが、まあいいじゃないですか。
(いろいろ論争とかもあったようですけど・・・)

この作品で東野圭吾は更に、大ブレイク!! 映画化、TVドラマ化などなど、それにミステリファンも増えたのではないでしょうか? いいことじゃないですか。

細かい箇所をどうこう言わず、読みやすく、ミステリ入門としては、トリックも素晴らしいし、出来たら月9「探偵ガリレオ」で取り上げてくれないかなあ・・・
(映像化可能だし、120分枠くらいで)

探偵ガリレオ

著者名:東野圭吾(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2002.02
ISBN :9784167110079


容疑者Xの献身

著者名:東野圭吾(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.08
ISBN :9784167110123


ネタバレです
posted by たちばな ますみ at 07:23| Comment(2) | TrackBack(1) | 国内作家・は行

2007年10月11日

「首切の如き裂くもの」三津田信三

三津田信三による刀城言耶シリーズの短編「首切の如き裂くもの」です。
(小説現代9月増刊号・メフィスト掲載)

はっきり言って、ストーリーなんかどうでもよろしい。
刀城言耶シリーズの新作が、読めるというだけで、私は幸せです。

「首切の如き裂くもの」というタイトル、楢喜八による雰囲気たっぷりの挿絵、そして、
あの路地にお化けが出る……。
という書き出し。
もう、これだけでも、大満足!! ほっぺた、緩みっぱなしです。

ストーリーは、首切小路と呼ばれる路地で、首を掻き切られる事件が相次ぎ、刀城が乗り出すというもの。
短編ですけど、例の、時系列の事象のまとめもあるし、トリックもちょっと苦しめだけど、目撃者である鷹部深代(みよ)が、何故、●●●を思いついたのか? という点など、小粒ながら、さすが、刀城言耶、と思わせる出来です。
(※ いつも読者を悩ます現場の状況も短編サイズで、分かりやすいです)

お楽しみとしては、「凶鳥」「首無」の事件のことにも言及されていたり(少しだけですが)、今回初めて出たタイトル怪奇中篇「黒ん坊峠」とか雪室(かまくら)殺人事件とか。
「首無」江川蘭子の名前も出てました。

早く次の長編、読みたいなあ・・・
posted by たちばな ますみ at 08:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 三津田信三

2007年10月10日

「赤石沢教室の実験」田代裕彦

赤石沢教室の実験

著者名:田代裕彦(著)
出版社:富士見書房
出版年:2007.07
ISBN :9784829176467


朱色の表紙、アラビア数字、漢数字、ローマ数字の入り混じった目次の章立て、そして、叙述トリックの匂いがプンプンする怪しげな二人称・・・
もちろんラストでは、それら全てに意味がある事がわかり、ニッコリ納得です。

片桐芸術高校に君臨するエリート集団「赤石沢教室」。それは、夭逝の芸術家、赤石沢宗隆最後の弟子たち。憧憬と羨望と、僅かな畏怖。それが彼らに向けられる視線。二年前に亡くなった兄のあとを追い、片桐芸術高等学校に入学したあゆみは、兄の死に「赤石沢教室」が関わっていると知る。密かに復讐を誓うあゆみだが、その頃から、奇妙な出来事が起こり始める―。終りを告げた漆塗りの闇の時代。“現代のゴヤ”が収集した少年少女。稀代の芸術家が遺した最高傑作とは?驚天動地のサイコロジカル・ミステリー。
(「BOOK」データベースより)

全編のほとんどが、二人称で語られるので、常に違和感が付きまとい、作者が叙述系トリックを仕掛けているのも分かり(とは言え、トリックは分かりませんでしたが)読んでいて、疲れました・・・。

叙述トリックも、登場人物が極端に少ないので、分かる人にはすぐ分かってしまうかも・・・それに、それがメインなだけに、分かってしまうと面白くないかも知れませんね。

しかし、ストーリー自体は、一種の復讐譚で、一人ずつ、殺害方法などを考えていく様子は、本格系と言うよりは、クライム系の雰囲気。読んでて、楽しかったです。

また、ラストで犯人が分かってからの、ちょっとくどい位のツイストの連続も、よかったです。(でも、あとがきは不要?)
ネタバレです
posted by たちばな ますみ at 08:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・た行

2007年10月09日

「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子

ぐるぐる猿と歌う鳥

著者名:加納朋子(著)
出版社:講談社
出版年:2007.07
ISBN :9784062705837


もしかすると加納朋子を読むのは、デビュー作の「ななつのこ」以来かも・・・。

五年生に進級する春、高見森(しん)は父親の転勤で東京から北九州へ転校することになった。わんぱくで怪我は絶えないし、物は壊すし、友だちは泣かせるしで、いじめっ子の乱暴者というレッテルをはられていた森の転校を聞いても、先生どころかクラスメイトのほとんど誰も残念がってはくれなかった。そんな森だったが、引越し先の社宅の子どもたち―ココちゃん、あや、竹本兄弟、パックとは不思議に気があった。彼らは森をまるごと受け入れてくれた。しかし森は次第に感じていた。この社宅には何か秘密がある。もしくは謎が…。
(「BOOK」データベースより)

謎は、主にプロローグやモノローグに出てくる、森たちの過去に関するもので、ストーリーの本編とは、あんまり関係ありません。
そこが弱いと言えば、弱いわけですが、ストーリーは、ほのぼのした子供向けのもので、同じミステリーランドでも、例の麻耶雄嵩「神様ゲーム」のようなハードな内容ではありません。

それにしても、子供たちが話す北九州弁は、

「そんなちゃちゃちゃちゃ言っとらんちゃ。」
あやが不満そうに言い、自分で気づいてにやりと笑った。「あー、言うとるっちゃね。」


などなど、読んでて気持ちよく、カワイイです。(ちょっと読みにくいですけどね)

加納朋子ファンの方は、どうぞ。私は「神様ゲーム」の方が好きです。
posted by たちばな ますみ at 08:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・か行

2007年10月05日

「サニーサイドエッグ」荻原 浩

サニーサイドエッグ

著者名:荻原浩(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.08
ISBN :9784488012267


前作「ハードボイルド・エッグ」は読んでませんが、大変楽しく読めました。

自分は、警察が持てあます類の難解な事件≠ノ向いていると思っているものの、捜査依頼は、犬猫探しばかりの探偵・最上俊平
犬猫探しをしたいのに、人捜しの依頼ばかり来てしまう米澤穂信「犬を探せ」紺屋長一郎とは対照的です。

フィリップ・マーロウに憧れる私は、むろん私立探偵である。が、やむなく、失踪したペットの捜索を請け負うこともある。ある日、和服を着た若く美しい女性が事務所を訪れてきた。ペット捜しならもう―「うちの猫を捜してほしいんです」はい喜んで。一カ月ぶりの仕事ではないか。しかもそうこうするうち、なんと「ブロンドで青い目の若い」秘書まで雇えることに。え、な、なんだこいつは!?おまけに猫捜しも、ただの猫捜しではなくなっていくのだった…。『ハードボイルド・エッグ』続編。最上俊平ふたたび。
(「BOOK」データベースより)

フィリップ・マーロウの作品は、読んで無くても十分楽しめますが、読んでると、もっと楽しめますね。

でもしかし、この話、長い・・・。
連載自体も「ミステリーズ!」で、なんと三年半。
最上の、センスのいいユーモアや、マーロウ張りのワイズクラックなんかが面白いし、ストーリー自体が、ハードボイルドものにしては、シンプルすぎるほどシンプルなので、まだましですが、猫探しのシーンが延々と続くのにはさすがに閉口しました・・・。
(反対に、ストーリーや謎自体は、この長さにしてはシンプルすぎ)

それでも、作者の、フィリップ・マーロウへの、ハードボイルドものへの、愛を感じるので、読んでいて気持ちいいです。

私は自分をいくつかの職業倫理で縛っている人間だ。依頼人と交わした約束は守る。(中略)警官とは親密にならない。依頼人とコーヒーを飲むときはブラックで。商売道具のひとつであるペットフードにはけっして手を出さないというのも、そのひとつだ。(P229)

ま、職業倫理とは関係なさそうなものも、ありますが、この7行あとには爆笑。

行きつけのJの店≠フマスター、問題児の茜、マーロウかぶれの県警の須藤、古典的美人の長尾千春(ハードボイルドものでは、こういう人が犯人に決まってるんだけど・・・)などなど、登場人物も魅力的だし、私は、この話、すごく気に入ったので、「ハードボイルド・エッグ」も読んでみようかなあ・・・。
posted by たちばな ますみ at 10:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・あ行

2007年10月01日

「朝顔はまだ咲かない 小夏と秋の絵日記」柴田よしき

朝顔はまだ咲かない

著者名:柴田よしき(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.08
ISBN :9784488023966


柴田よしきによる日常の些細な謎を解く、引きこもり安楽椅子探偵ものであります。

お話は…
高校一年のときから、ひきこもりとなったあたし、鏡田小夏。あたしを訪ねてくるのは、親友の秋だけ。秋は、奔放なイマドキの女の子。今日も、恋の一部始終を報告にやってくる。そう、ひきこもりのあたしにだって、恋にも将来についても悩みはある。そんな二人の女の子が遭遇した、七つの出来事を描く青春ミステリ。
(「BOOK」データベースより)

まあ、謎といっても、大した謎ではなくて、ひまわりを嫌う男の話、朝顔の鉢がいつの間にかアイビーになってる話とか・・・日常の謎といっても、ほんとに小さい謎ばかりです。
謎自体の面白さとしては、雨が降ってないのに公園で傘を差す人の話、「黒い傘、白い傘」が、秀逸。

読みどころは、高校でのいじめ等が理由で、引きこもりになった小夏が、友人・宮前秋なんかの力も借りつつ、自分自身と向き合って、元気になっていくところ。

小夏は、ネットで他の引きこもりの人の日記を読んで、こう思う。

引きこもり克服に成功してる人が世の中にはいっぱいいる、ってことを、信じたくない。で、最後には、成功した人の話からどんどんリンクをたどって、あたしよりもっと悲惨な状態にいる人の日記にたどり着き、内心ちょっと安心して優越感なんか抱きながら、あたしの方がましじゃん、と笑っている。(P116)

これだけ読むと、かなり自虐的なカンジもしますが、そんなことはありません。
彼氏らしき人もでき、引きこもり脱出に向け、小夏は前向きなところが小気味いいです。

続編「レッド・マスカラの秋」も予定されている永井するみ「カカオ80%の夏」が面白かった方にはオススメです。
(小夏は、なんとなく、少し前の田中麗奈のイメージかな?)
posted by たちばな ますみ at 10:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・さ行