2007年08月29日

「異界」鳥飼否宇

異界

著者名:鳥飼否宇(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.07
ISBN :9784048737784


鳥飼否宇「異界」、正直、期待せずに読んだんですが、面白かったです。

明治三十六(一九〇三)年春―。那智勝浦で奇怪な少年の姿が目撃される。目撃者の証言によると、少年は鶏や兎を襲い、人語を解せず獣のように吼えながら山の中へ逃げていったという。その後も目撃例が相次ぎ、村人の間には狐憑きの少年とか、神の姿だとかの憶測が流れる。そのさなか、とある病院で乳児が攫われるという事件が発生、博物学者・南方熊楠は弟子と共に事件解決へと乗り出すのだが。神話、狐憑き、山の民―。日本の風土に根づいた神秘を繙きながら明かされていく驚天動地の真相とは…!?横溝正史ミステリ賞作家が新たに挑む本格伝奇ミステリ。
(「BOOK」データベースより)

南方熊楠が探偵役だけに、山の民であるサンカ≠ニ呼ばれ、蔑まれた人々の話など、民俗学的な内容も、なかなか面白く、読みながら、「あ、これは三津田信三の刀城言耶シリーズっぽい!!」と思ってしまいました。
刀城シリーズならさしずめ「豺狼(さいろう)の如き喰らふもの」といったところでしょうか…?

刀城シリーズに比べたら、民俗学の部分も、くどくなくて、すごく読みやすいし、南方のキャラが楽しいです。(弟子の福田太一のことをあんぽん太一≠ニ呼ぶ、呼び方がスキ)

ミステリとしての謎解き部分は、細かい伏線(例えばコガネの●●●や、太一の●●●)など、実にいいです。面白いです。

また、ある特別ゲストについては、謎解きに絡んではきますが、わざわざ、この人を出す必要はなかったのでは? と思います。
(神戸の方へ、その人を迎えにいく間、南方が那智からいなくなりますが、それもあまり意味がないし…)

南方が探偵役だと、いくらでも話が出来そうなので、シリーズ化して欲しいところですが、私の大好きな刀城シリーズと被ると困るので、この一作でいいかな。
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2007年08月27日

「ロスト・チャイルド」桂 美人

ロスト・チャイルド

著者名:桂美人(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.07
ISBN :9784048737838


第27回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作「ロスト・チャイルド」、読みました。
ストーリーは…

法医学教室の助教授・神(じん)ヒカルは、監察医務院で外国人グループの襲撃にみまわれる。次々と犠牲者が発生するなか襲撃犯のターゲットは、解剖室に運ばれた女性国際スパイ“ジュリエット”と判明、その死体にはある機密が隠されているという。さらに彼らはヒカルのことを知っていた。誰にも触れられたくない“あの忌まわしき過去”のことも…。襲撃犯の真の目的とは一体何なのか?そして、ヒカルにまつわる悲劇と驚愕の秘密とは―?いま、前人未踏の物語が、ここに疾駆する!

前半は、ストーリー云々以前の問題として、三人称の視点がバラバラで、とても読みにくかったです。例えば、22ページ。

 警察だって当てにできない。通報を受けてから最初の警官が現場に到着するのに四、五分。同時進行で初動捜査専門の機動捜査隊が動くが、ろくに射撃練習もしていない刑事たちに機関拳銃を所持する相手に何ができる。

文脈からすれば、ここは、ヒカルの視点のはずなのに、いきなり神(かみ)の視点になってます。(法医学の助教授のヒカルは、こんな専門知識は持ってないはず)

などと、私は気になって仕方なかったんですが、巻末の選評を読むと、審査員の先生方は、あまり気にしてないご様子。

ハッキリ言って、物語の核となる遺伝子の話も、よく分かりませんでした…

他にも、いろいろありますが、もういいです。
私にはおそらく、もう一作の受賞作である大村友貴美「首挽村の殺人」の方が向いているんでしょう、たぶん。(← 投げやり?)
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2007年08月20日

「シャーロック・ホームズと賢者の石」五十嵐貴久

シャーロック・ホームズと賢者の石

著者名:五十嵐貴久(著)
出版社:光文社
出版年:2007.06
ISBN :9784334076566


現在、「パパとムスメの七日間」が絶好調の五十嵐貴久によるシャーロック・ホームズのパスティーシュ集。

1話目のみ、メタっぽいお話ですが、聖典に出てくるバリツ≠ノ関する第2話、「賢者の石」を発見したニューヨーク大学の教授の息子が、厳重に監視されているホテルから失踪する(犯人はドイツ軍?)という第3話、そして第4話は、ホームズと同時期に霧のロンドンを跋扈した例の殺人鬼に関するお話。。。

もちろんパスティーシュなので、聖典は読んでる方が楽しめるんですが、読んで無くても大丈夫です。
この2〜4話の各話には、それぞれ最後に、あるシカケがあってこれが楽しいんです!!

このシカケに関しては、ネタバレになるので、言えませんが、特に第3話「賢者の石ー引退後の真実」のシカケにはビックリしました。

本文イラストは、ひらいたかこさんが担当し、神経質そうで、渋さMAXなホームズがいいです。サクサク読めるので、お気軽にどうぞ。
ホームズと言えば・・・
posted by たちばな ますみ at 00:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・あ行

2007年08月16日

「スラッシャー 廃園の殺人」三津田信三

スラッシャー廃園の殺人

著者名:三津田信三(著)
出版社:講談社
出版年:2007.06
ISBN :9784061825338


「スラッシャー 廃園の殺人」は、三津田信三のB級ホラー・ミステリです。
最後にあえてミステリ≠ニ付けたのは、ラストにしっかりツイストしてくれるので。

スラッシャー≠ニは、登場人物のの騎嶋豪によると

「いわゆる殺人鬼や化け物のような存在が、登場人物たちをひとりずつ殺していく話のことを、そんな風に呼ぶわけです。主に作品の舞台となる場所にそいうヤツがいて、そこを訪れた数人のメンバーが次々と殺されてゆくという設定(後略)」のこと。

ストーリーは、お約束通りに、ホラー作家・廻数回一藍(えすえ・いちあい)によって作られた廃墟庭園に入り込んだ映画スタッフたちが、全身黒ずくめの怪人によって、ひとり、またひとりと血祭りにあげられていきます。(ちょっとグロいとこもありますが)

犯人(怪人)は、当然、映画スタッフの中の人間でないと面白くないので、作者は、見え見えの巨大なレッド・へリングを読者の目の前に、これでもか!! とぶら下げてきます。このぶら下げ方が、三津田信三、やっぱりうまい!!

そして、ラストのツイストは●●系なんですが、これはよくあるパターンのオチですよね。
(私の大好きなTVドラマ「銭形●」の第13話も、このオチだったような気が・・・間違ってたらごめんなさい)
それと、人間消失トリックは、アンフェアだと思うんですけど。。。

でも、私は結構楽しんでしまいました。何と言っても、巻頭の

ダリオ・アルジェントに本書を捧ぐ

の献辞にシビレました!!
作中でも映画「フェノミナ」ジェニファー・コネリーが蛆虫プールにはめられた、とか企画会社の名前がプロフォンド・ロッソ≠セったりと、思わずニヤリとしてしまうネタや薀蓄満載です。(前半だけですけど)

そんなこんなで、久しぶりに「フェノミナ」でも観ようかなあ・・・という気分になりました。
(この映画はとにかく14歳のジェニファー・コネリーが美しすぎます!! 未見の方は「フェノミナ」「サスペリア」を観てから本書を読むと、楽しさ倍増です。ついでに「サスペリア2」も!!)
posted by たちばな ますみ at 00:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 三津田信三

2007年08月13日

「密室殺人ゲーム王手飛車取り」歌野晶午

密室殺人ゲーム王手飛車取り

著者名:歌野晶午(著)
出版社:講談社
出版年:2007.01
ISBN :9784061825130


簡単にまとめて一言で言ってしまうと「歌野晶午のお蔵入り小ネタ集」(←ちょっと酷すぎ? ごめんなさい)

お話はこんなです…

“頭狂人”“044APD”“aXe(アクス)”“ザンギャ君”“伴道全(ばんどうぜん)教授”。奇妙なニックネームをもつ5人がインターネット上で殺人推理ゲームの出題をしあっている。密室、アリバイ崩し、ダイイングメッセージ、犯人当てなどなど。ただし、ここで語られる殺人はすべて、現実に発生していた。出題者の手で実行ずみなのである…。茫然自失のラストまでページをめくる手がとまらない、歌野本格の粋。
(「BOOK」データベースより)

タイトル通り、5人が順番に出題していく「殺人ゲーム」なわけですが、どれもトリック的にはイマイチ。
「生首に聞いてみる?」が一番、本格っぽいけど、トリックとしては普通ですよね?

「密室でなく、アリバイでもなく」のラストのツイストも、結構ありがちです。先日もTVドラマでやってましたよね。似たようなネタで。(こちらは、犯行動機そのものに関わっていて、面白かったです)

歌野が書いている「あまりにふざけた話」の状況設定のためにボツネタっていうのではなく、トリック的に、ボツネタだと、私は思うんですが・・・

で、問題のラスト「Q8」ですが、これはもう、どうでもよろしい。あっても、なくても。
(今回、辛口すぎました???)
posted by たちばな ますみ at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・あ行

2007年08月12日

「生還者」保科昌彦

生還者

著者名:保科昌彦(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.04
ISBN :9784103044710


20人以上の犠牲者を出した山崩れからの6人の「奇跡の生還者」たち。
しかし、その生還者たちが、ひとり、またひとり、と謎の死を遂げていく・・・
これは呪いなのか? それともただの偶然なのか?
そして、生還者のひとりである主人公も、恋人を事故のために死なせてしまったために、罪の意識に苛まれ、人を疑い、次第に壊れていってしまう。。。

本書を読みつつ、ホラー映画の「キャンディマン」を思い出しました。
アメリカの都市伝説のひとつキャンディマン=B
この映画は、キャンディマン≠ェ、想像上のモンスターで、歪んだ意識が生み出しているものなのか? それとも、都市伝説ではなく、本当に存在するのか? が、なかなか分からないところが、すごく面白い映画でした。
(キャンディマンとは・・・ と詳しく書き出すとキリがないので、興味がある方は各自、調べて下さいネ)

本書、保科昌彦「生還者」も、生還者のひとりである仲居さんの息子さんの呪い≠ナあるのか? それとも偶然? または何らかの動機を持った犯人がいるのか?

が、分からないうちが面白かったです。「キャンディマン」もそうだけど、答えが分かってしまうと、恐さもなくなるし、ダメです。

ただ、主人公の壊れっぷりは、生還者が死んでいくことより恐かったです。疑心暗鬼に陥って、好意を持ってくれている人まで、敵に回してしまう・・・
だんだん、普通ではなくなっていく過程が、素晴らしくホラーしてました。
(あと、表紙も恐いですね…)
ネタバレです
posted by たちばな ますみ at 00:44| Comment(2) | TrackBack(1) | 国内作家・は行

2007年08月11日

「離れた家」山沢晴雄&「むかで横丁」

離れた家

著者名:山沢晴雄(著)
日下三蔵(編集)
出版社:日本評論社
出版年:2007.06
ISBN :9784535584853


表題作「離れた家」は、とにかく「美しい」の一言。
とても昭和38年の作品とは思えません。

「こんな犯人、おらんやろ〜」とは思いつつ、久々に「推理小説」を、読んだ気がしました。
長坂秀佳脚本の「特捜最前線」のエピソードみたいと言うか・・・それ以上と言うか・・・

何せ、犯人の組み立てる巧緻かつ繊細なアリバイ・トリックを、補完させるべく、かつて見たことも聞いたこともないような、状況設定がなされます。
それも、事件が起こってすぐに、トリックを暴く、時系列の実施計画書が発見されるんですが、そこからが作者・山沢晴雄の腕の見せ所です。
これで複雑・難解にならない訳がないでしょう?! その難解さゆえに、幻の傑作になるべくしてなってしまった傑作ということでしょう。

この本は、サブタイトルにあるように「山沢晴雄傑作集」なので、ガチガチの本格もの(アリバイもの中心)以外にも、「宗歩忌」みたいに幻想的なものなんかもあるんですが、やっぱり「離れた家」が一番です。

で、解題にも出てくる「むかで横丁」「絢爛たる殺人」所収・光文社文庫)も、気になるので、読んでみました。

こちらは、推理作家3名によるリレー小説なわけですが、山沢氏はもちろん「解決篇」を担当してます。
「発端篇」「発展篇」担当の2人との相談等は禁止されているにも関わらず、伏線を丹念に拾って、すべてをまとめ、様々な条件があるのに、ここでも複雑な解答を提出し、さらにどんでん返しまで用意する力技には、ホントに感心しました。スゴイです。

最後に、光文社文庫の「硝子の家」に収められた「離れた家」芦辺拓による解題より

ともあれ、本作品を読まれたみなさんの感想は「ここまでやるか!」の一言でしょう。
それに対する私たちの返答は−−−むろんのこと自戒と反省を込めて言うのですが−−−
本格推理小説というものは「ここまでやる」ものなのです。


絢爛たる殺人

著者名:芦辺拓(編集)
岡村雄輔(著)
出版社:光文社
出版年:2000.10
ISBN :9784334730710

posted by たちばな ますみ at 00:30| Comment(0) | TrackBack(1) | 国内作家・や行

2007年08月06日

「青年のための読書クラブ」桜庭一樹

青年のための読書クラブ

著者名:桜庭一樹(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.06
ISBN :9784103049517


一読して、かつての「なんて素敵にジャパネスク」氷室冴子を思い出しました。(古い? 古すぎる??!!)

面白かったですよ、ミステリではないですが。。。

お話は・・・
東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。校内の異端者(アウトロー)だけが集う「読書クラブ」には、長きにわたって語り継がれる秘密の“クラブ誌”があった。そこには学園史上抹消された数々の珍事件が、名もない女生徒たちによって脈々と記録され続けていた―。
(「BOOK」データベースより)

というわけで、1969年から、2019年までの、50年にわたる5つの連作短編。
それぞれが「シラノ・ド・ベルジュラック」「マクベス」「緋文字」そして「紅はこべ」などの文学作品をうまく物語に取り入れています。

主人公の少女たちの名前も、烏丸紅子(からすま・べにこ)山口十五夜(やまぐち・じゅうごや)五月雨永遠(さみだれ・とわ)などなど、楽しい。

まあ、氷室冴子を思い出した事から考えても、これは桜庭一樹のラノベ系お話なんですよね? ミステリかな? と思って読んだのにな。。。
posted by たちばな ますみ at 23:54| Comment(2) | TrackBack(1) | 桜庭一樹

2007年08月02日

「ハル、ハル、ハル」古川日出男

ハル、ハル、ハル

著者名:古川日出男(著)
出版社:河出書房新社
出版年:2007.07
ISBN :9784309018287


前作「サマーバケーションEP」は、東京を舞台にしたロード・ノベルでありながら、主人公の思考に合わせたような、ゆったりとした文体で、大きな川の流れのような小説でした。

それに対して、この中篇、「ハル、ハル、ハル」は、作者古川日出男

この物語はきみが読んできた全部の物語の続編だ。

と言うとおり、挑発的で、スピード感があり、テンポよくストーリーが展開していきます。

他に「スローモーション」「8ドッグズ」の2篇の中篇がおさめられているんだけど、どれも暴力的で、反社会的で、世間から逸脱してしまった(せざるをえなかった)人たちの物語。

小説は世間なんぞに吸収されるものではない。小説のリアリティこそが、虚構としての世間を咬む。
posted by たちばな ますみ at 11:13| Comment(0) | TrackBack(1) | 古川日出男