2007年07月30日

「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信

夏期限定トロピカルパフェ事件

著者名:米澤穂信(著)
出版社:東京創元社
出版年:2006.04
ISBN :9784488451028


脱帽。
こんなミステリが読めるなんて、私はホントに、しあわせものです。

米澤穂信による、前作「春期限定いちごタルト事件」に続く小鳩常悟朗小山内ゆきによる<小市民>シリーズの第2作「夏期限定トロピカルパフェ事件」

第1章では、何と! 犯人の視点からの、手に汗握る倒叙形式で語られ、第2章では、前作に引き続き、日常の小さな謎解き(暗号もの)が、ハンバーガーショップの2階で繰り広げられます。

その謎に対し、小鳩くんは、小市民であろうとはせず、理屈をこねて正当化して、解きあかす訳だけど、実はその裏には…というのが、今回のお話。

後半は、大事件が起こり、小市民がどうとか言ってられない状況になるんだけど、とにかく、この作品、素晴らしい構成になってます。

最後になって、序章も含めて、全編に張り巡らされた伏線に気づかされ、なぜ、第1話、第2話…ではなく、第1章、第2章…となっているのか? にも納得がいきます。
1冊で、「夏期限定トロピカルパフェ事件」だったんですね。

それにしても、ひとつひとつのエピソードの面白さはもちろん、全編にわたって本格魂を感じさせ、次回予定作の「秋期限定マロングラッセ事件」も待ちきれません。

(ところで、作中で小鳩くんが読んでるミステリは、もしかして本作? 入れ子構造? 考えすぎ???)
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2007年07月25日

「禍家(まがや)」三津田信三

禍家

著者名:三津田信三(著)
出版社:光文社
出版年:2007.07
ISBN :9784334742812


やっぱり三津田信三、面白いですね!!

本書「禍家」(まがや)は、書き下ろしノン・シリーズのホラー長編なんですが、前半は12歳の棟像貢太郎(むなかた・こうたろう)少年が引っ越してきた家で出会うホラー色100%のお話。
老人の腕がうねうねと伸びてきて襲いかかったり、その他にも、あんなことや、こんなことがいっぱい起こって、大きな家に住んでる人は、夜中に一人ぼっちで読まないほうがいいかも…。

後半は、その怪現象が起こる家の過去を探るべく、同じく12歳の生川礼奈(おいかわ・れな)との謎解き中心に、展開していきます。
そして、ラストの・・・(以下ネタバレ参照)

ところで、この「禍家」って、映像化されませんかねえ。「土曜ワイド劇場」あたりで。

同じく三津田信三「厭魅の如き憑くもの」「凶鳥の如き忌むもの」なんかは、映像化はすごく難しそうだけど、これはビジュアル的にも面白いし、お金もあまりかけずに出来そうなので、どこか映像化してください。
小久保のじいさんは、大滝秀治で、どすか!?
ネタバレ
posted by たちばな ますみ at 10:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 三津田信三

2007年07月23日

「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信

春期限定いちごタルト事件

著者名:米澤穂信(著)
出版社:東京創元社
出版年:2004.12
ISBN :9784488451011


「小市民にとって、一番大切なものって、小鳩君はなんだと思う」
言下に答えた。
「現状に満足すること」


自分の小賢しさが嫌で小市民≠目指す、高校1年生になったばかりの、小鳩常悟朗(こばと・じょうごろう)と、同じくある理由から小市民を目指す、小山内ゆきの二人。

カバンが無くなったとか、おいしいココアの作りかたとか、どこにでもあるような日常の謎を解くんだけど、連作短編である本書の最終話「狐狼の心」が、いい。

特に、二人の理解者であり、よき協力者でもある友人、堂島健吾との一連のやり取りが楽しい。
小鳩くんの、小市民たろうとする気持ちと、それを許さない状況との板ばさみ。
推理したくないのに、せざるを得ない小鳩くん。(ま、ホントは嬉々として推理しているであろうことは、疑いのない事実でしょうけど…)

謎解きも小鳩くんが「これは推理の連鎖で片がつく」と言うように、数少ない手掛かりから、推理を積み重ねていく。この砂上の楼閣的な、安楽椅子探偵的な、謎解きが本書の一番のミステリ部分の読みどころ。
そして、最後になって分かる小山内さんの、小市民を目指す理由。。。

「エピローグ」のラストにも笑ってしまったけど、二人の目指す小市民の星は、まだまだ遠いみたい。
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2007年07月19日

「ミサイルマン」平山夢明

ミサイルマン

著者名:平山夢明(著)
出版社:光文社
出版年:2007.06
ISBN :9784334925574


初めて平山夢明を読んだのは、瀬名秀明の編んだアンソロジー「贈る物語 Wonder」に収録されていた「托卵」でした。
変わった面白い話を書く人だなあ…と思い、短編集を探しましたが、出ているのはスプラッタ系の本ばかりで、「托卵」とは系統の違ったような本ばかりで、それっきりになってました。

この短編集「ミサイルマン」には、私がかつて探した「托卵」系統の作品もあり、人体徹底破壊系の作品もありで、いろいろと楽しめました。

前者はアイラ・レヴィン「ローズマリーの赤ちゃん」飯田穣治+梓河人「破壊する男」を髣髴とさせる「或る彼岸の接近」

墓地のある家を借りたのは勿論、賃料が破格だったからなのです。

冒頭、この一文から始まり、徐々に壊れていく妻、不気味な人形ヨーイチ、逆さ十字架・・・先が読める分、そんなに怖くはないですが、オカルトものとして楽しめました。

後者では、読むのを止めようかと思った「枷(コード)」
とにかく、執拗な人体破壊描写に、読んでて、気持ち悪くなりました。
でも、一番面白かったのも、この「枷」でした・・・。
こうして読み返しながら書くだけでも、気持ち悪くなってくるんですが、それでも、ラストも含めて、好きです。

その他にも、●●ものの「けだもの」はかっこ良くて、映像化希望。(まあ、されないでしょうけど)

この1冊でも、いろんなタイプの作品が、あってホント、楽しめました。
でも、次また、平山夢明を読むかと訊かれたら、「分からない」と答えることにします。
贈る物語Wonder

著者名:瀬名秀明(編集)
山川方夫(著)
出版社:光文社
出版年:2002.11
ISBN :9784334923778

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2007年07月17日

「こどもの一生」中島らも

こどもの一生

著者名:中島らも(著)
出版社:集英社
出版年:2006.07
ISBN :9784087460575


著者中島らも絶賛のB級ホラー小説。
「白いメリーさん」に入ってる「日出通り商店街いきいきデー」を思い出しました。

お話は…
絶海の孤島でサイコ・セラピーを受け、投薬と催眠術により10歳の子供にもどる五人の男女。
ところが、10歳になっても、会社での上司・部下の関係を持ち込み、わがまま放題を続ける男がいた。
それを懲らしめるために他の4人は「ある遊び」を思いつく。
この「ある遊び」こそが、恐ろしい結果を招くとも知らずに…

てな訳で、読み進むうちに、恐ろしい結果も分かっては来るんだけど、らもさんの言う通り、B級ホラーとして楽しめました。(ちょっと期待し過ぎの部分もありましたが)
前半3分の2はお笑いで、後半の3分の1はスプラッタ系ホラーと化します。

また、血ドバドバに必要不可欠な、スプラッタ・アイテム(マグロ包丁とかチェーンソーとかね)は前半の、ここかしこに登場し、後半の爆発的なカタストロフィを予感させます。

そして、当然、その期待に応えてくれて、予想通りのカタストロフィがやってきます。

このお話、最初は舞台だったそうだけど、そっちを観たかったなあ・・・
(古田新太が●●役だったんですね!!)

白いメリーさん

著者名:中島らも(著)
出版社:講談社
出版年:1997.08
ISBN :9784062635776

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「チルドレン」伊坂幸太郎

チルドレン

著者名:伊坂幸太郎(著)
出版社:講談社
出版年:2007.05
ISBN :9784062757249


「失恋した俺のために、今、この場所は時間が止まっている」

破天荒な性格の家裁調査官の陣内、目は見えないけれど、物事の本質は誰よりも見えている永瀬、その盲導犬べスと、永瀬の彼女でありながらベスに対抗意識を燃やし、嫉妬する優子。。。

「重力ピエロ」もそうだったけど、この「チルドレン」も、冒頭の一言を断言した陣内を初めとして、キャラがしっかり立ってます。悪人って出てこないし。

と、言うよりも、5編の連作短編を、時系列に並べず、過去と未来を行ったり来たりさせつつ、登場人物の個性(取り分け陣内)を際立たせてる処こそが本書のキモかな。

だからこそ、この一作だけではもったいない、続編を書いて欲しいなあ・・・と思ってしまいます。

その分、5編中「バンク」「レトリーバー」以外はミステリ色があまり、ありませんけど。
でも、やっぱり伊坂はいいです。読んでて、楽しいのはもちろん、幸せな気分にしてくれます。

この「チルドレン」を教えてくれたmasakoさん、ありがとう。次は「ラッシュライフ」を読んでみます。
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2007年07月12日

「人柱はミイラと出会う」石持浅海

人柱はミイラと出会う

著者名:石持浅海(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.05
ISBN :9784103046714


パラレル・ワールドの日本を舞台に、人柱職人が、安楽椅子探偵を務める、連作短編集。

人柱職人とは、建築物を造る際、安全を祈念して人間が生きたまま、数ヶ月から、長いもので数年、個室に閉じ込もって、基礎工事が終わると出てくることを職業にしている人のこと。

アメリカからの留学生リリー・メイスと一木慶子を狂言回しとして、人柱職人の東郷直海(とうごう・なおみ)が、謎を解いていきます。

私は個人的には安楽椅子探偵ものって好きなんですが、これも面白かったです。
特に、表題作の「人柱はミイラと出会う」がいいです。

安楽椅子探偵では、アシモフ「黒後家蜘蛛の会」なんかが有名ですが、基本的に、探偵役の人物が話を聞き終わった段階で、手掛かりはほとんどさらされているわけですよね?(大体ですが)
語り手の話の中に、伏線はバッチリ張られている。これぞ本格!!

この連作でも、東郷は話を聞いた段階で、大体謎を解いています。
表題作でも、しっかり、伏線が張られていて、無駄がありません。
ただ、後半はちょっと息切れ気味かも・・・

(4話めの「厄年は怪我に注意」は、泡坂妻夫の亜愛一郎シリーズの心理トリックみたいな話!? と途中まで期待してしまいました)
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2007年07月11日

「くらのかみ」小野不由美

くらのかみ

著者名:小野不由美(著)
出版社:講談社
出版年:2003.07
ISBN :9784062705646


出だしの死人あそびのあたりは、怖くて、ホラーなのかな? と、かなり期待してしまいました。
子供が一人多い・・・座敷わらしは誰か?

ところが、事件が起こると、わらしちゃんの話題はすっかり消えてしまって、本格ミステリへと変貌してしまいします。
そこからは、とにかく登場人物が分かりにくい!!
名前は、一郎、次郎などと、配慮してくれてはいるものの、記号でしかない名前は、やっぱり分かりにくいですね。

さらに、各人のアリバイ、動機など、時系列に整理してくれてましたが、ごめんなさいして、読み流してしまいました。。。

最後に、わらしちゃんの話が出てきて(結構、唐突に)、犯行動機なんかとも綺麗にリンクしていくだけに、もったいなかったです。
出来れば、もう少し登場人物を少なくするとかして欲しかったです。
posted by たちばな ますみ at 17:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・あ行

2007年07月06日

「凶鳥の如き忌むもの」三津田信三

凶鳥の如き忌むもの

著者名:三津田信三(著)
出版社:講談社
出版年:2006.09
ISBN :9784061824973


「厭魅の如き憑くもの」に続く刀城言耶(とうじょう・げんや)シリーズ。
いや、面白いですよ、これ。

前半の民族学の部分は、前作に引き続いて、眼をつぶってよんでもらうとして(でも、ちゃんと伏線として活きてます)事件が起こってからは、さくさく読めます。

お話は…
怪奇幻想作家である刀城言耶は、瀬戸内海にある鳥坏島(とりつきじま)(←これってもしかして鳥≠ニトリッキー≠ニをかけてる??)へと18年ぶりに行われるという鳥人の儀≠取材に行く。
島の断崖絶壁の上に造られた拝殿で行われるその儀式は、18年前に、参加した8人のうち7人までが行方不明となっているものだった。。。

今作は、横溝正史「獄門島」のように島に向かう船のシーンから幕を開けます。
「獄門島」では、この船のシーンに物語の重要な伏線が、張り巡らされている訳ですが、「凶鳥」では、ここから民族学講義が、こってり行われます。

そして「厭魅」のさぎり<Vスターズに続いて、「凶鳥」では、鵺敷(ぬえじき)神社の朱世(あかよ)、朱名(あかな)などの朱<Vスターズが登場します。
(ただし、前回とは違って、ややこしくありませんので、ご心配なく)

で、今回の謎は、ずばり人間消失

刀城を初めとした登場人物が、人間消失の分類と方法≠フ章で、ひとつひとつのケースについて、検証、議論していきます。
ここら辺も、面白いと感じるか、煩わしいと感じるかで、評価は大きく分かれると思います。

ただ、少し残念なのは、事件の舞台となった、拝殿や飛翔岩、階段廊下なんかの位置関係がよく分からなかったこと。見取り図を付けて欲しかったです。(え、私だけ!?)

しかし、圧巻は、やっぱり、ラストの謎解き!!
前作に続いて、関係者が一堂に会して(といっても嵐の孤島¥態だから当然?)刀城が見事な謎解きを行います。
衝撃的な結末ですが、伏線が、しっかり活きてるところが、素晴らしい。
今回はホラー部分が薄い分、本格ミステリと民俗学の部分が、美しく融合しているところもマルです。
(バカミス、すれすれという気がしないでもないですが…)

三津田信三、いいですね。オススメです
posted by たちばな ますみ at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 三津田信三

2007年07月02日

「カカオ80%の夏」永井するみ

カカオ80%の夏

著者名:永井するみ(著)
出版社:理論社
出版年:2007.04
ISBN :9784652086049


「ミステリチャンネル」5月の「これがイチオシ」に選ばれていたので、永井するみ、読んでみました。

主人公は、三浦凪(なぎ)17歳。
夏休みに、クラスメートの雪絵が、書置きを残して姿を消してしまう。
特に仲が良かったわけではなかったが、行きがかり上、雪絵を探すことになる凪。。。

というわけで、典型的な、失踪人探しの、ガーリッシュ・ハードボイルドです。

この作品は、理論社の「ミステリーYA!」という若い世代′けのシリーズらしいんですが、ちょっと謎がさくさく解けすぎです。犯人もすぐにわかっちゃうし、ご都合主義すぎのところもあるし。。。

と、思ってたら、このシリーズのこれからのラインナップを見ると、かなり期待できそうなんです。
鯨統一郎田中芳樹(ゴシックホラー)、海堂尊あさのあつこ、そして皆川博子まで、バラエティーに富んだ(何でもあり?)執筆陣で、講談社の「ミステリーランド」シリーズ同様に、年末のベストテンにも顔をだしそうな感じです。期待しましょう!!

(ところで、この「カカオ80%の夏」は、表紙が松尾たいこさんなので、嬉しかったです)
どうでもいいかも知れませんが・・・
posted by たちばな ますみ at 10:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・な行