2007年06月28日

「重力ピエロ」伊坂幸太郎

重力ピエロ

著者名:伊坂幸太郎(著)
出版社:新潮社
出版年:2006.06
ISBN :9784101250236


春が二階から落ちてきた。

図書館で、何気なく棚を見てたら「重力ピエロ」があったので借りて来ました。他にも予約してた本が手元に届いたので、「時間的余裕があれば読もう」くらいに考えてたんですけど、冒頭の書き出しの一文に惹かれて、ずるずると読んでしまいました。。。

特に、1章にあたる「ジョーダンバット」は、魅力的な書き出しもさることながら、主人公の泉水(いずみ)と春(はる)の兄弟の関係や性格を際立たせていて、物語のつかみとして、素晴らしい。

ストーリーは、泉水と春、そして癌で入院中の父親が、連続落書き&放火魔の謎を追いかける(簡単に言えばですが)というお話。

放火犯を追う、という謎解きの物語でありながら、謎解き部分はどうでもいいと思えるようなお話でした。
泉水や春、そしてお父さんの会話や、遺伝に関するウンチクや、ちょっと怪しげな元ストーカー郷田順子の言動など、謎解きなしでも十分に面白かったです。

読んでいてすぐに思ったのは、伊坂幸太郎は、善意の作家であるということ。
私の一番好きなのは、次の一文。心が洗われます。

昔から、春が笑うと私たち家族は幸せだった。
posted by たちばな ますみ at 00:28| Comment(2) | TrackBack(1) | 伊坂幸太郎

2007年06月25日

「神様ゲーム」麻耶雄嵩

神様ゲーム

著者名:麻耶雄嵩(著)
原マスミ
出版社:講談社
出版年:2005.07
ISBN :9784062705769


麻耶雄嵩って、この前の「蛍」が初めてだったんですが、こういうお話ばっかりなんでしょうか?
ミステリーランドの1冊ですが、とても子供向けとは思えない内容。ラストもスゴイし。。。
P229の挿絵をはじめとしてトラウマネタ満載の一冊です。
でも、面白く読めましたよ。

小学四年生の芳雄の住む神降市で、連続して残酷で意味ありげな猫殺害事件が発生。芳雄は同級生と結成した探偵団で犯人捜しをはじめることにした。そんな時、転校してきたばかりのクラスメイト鈴木君に、「ぼくは神様なんだ。猫殺しの犯人も知っているよ。」と明かされる。大嘘つき?それとも何かのゲーム?数日後、芳雄たちは探偵団の本部として使っていた古い屋敷で死体を発見する。猫殺し犯がついに殺人を?芳雄は「神様」に真実を教えてほしいと頼むのだが…。
(「BOOK」データベースより)

自称神様の鈴木太郎君が、本当の神様なのか? それとも違うのか? というのもこの作品の楽しさの一つで、問題のラストにもつながってきます。

本当の神様だとすれば、「神様」という観点から事件を解くと、本来は本格ミステリなんか成立しえないはずなのに、ちゃんと本格ミステリになってるところが、麻耶雄嵩のえらいとこですね。

それにしても、このミステリーランドのシリーズって、挿絵画家の選択がホントに素晴らしい!!
ここからネタバレ
posted by たちばな ますみ at 10:38| Comment(0) | TrackBack(2) | 麻耶雄嵩

2007年06月24日

「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」三津田信三

厭魅の如き憑くもの

著者名:三津田信三(著)
出版社:原書房
出版年:2006.02
ISBN :9784562039838


横溝正史ファンの私は、「はじめに」を読んだだけで、その雰囲気にうっとりしまうほどの本格探偵小説=B

横溝の「獄門島」の本鬼頭と分鬼頭、「悪魔の手毬唄」の仁礼家と由良家を思い起こさせる、憑き物筋の谺呀治(かがち)家と非憑き物筋の神櫛(かみぐし)家という対立する二つの旧家・・・

神隠し、生霊、厭魅(まじもの)、得体の知れぬ何か、などなど禍々しい雰囲気たっぷりの舞台に、探偵・刀城言耶(とうじょう・げんや)が、活躍する、今月の私のオススメ本です!!

でも、はじめは巻頭の家系図と首っ引きで読み進めました。
少々ややこしい人間関係。
叉霧、捺霧、早霧、嵯霧、小霧、そして紗霧というさぎり<Tンのオンパレード!!
(全部さぎり≠ニ読みます・・・)

でも、安心して下さい。大丈夫、途中から面白く、そして土俗ホラーの恐ろしさ満点になってきます。
読みにくかった漢字、とっつきにくかった字面が、怖さ、雰囲気作りに役立っていることが分かってきます。

そして、大団円(この言葉自体あまり見なくなりましたね)の素晴らしさ!!
探偵・刀城は、関係者全員を一堂に集めて、謎解きをします。
ここからネタバレ
posted by たちばな ますみ at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 三津田信三

2007年06月18日

「たちの悪い話」バリー・ユアグロー

たちの悪い話

著者名:バリー・ユアグロー(著)
柴田元幸(訳)
出版社:新潮社
出版年:2007.02
ISBN :9784105334048


まさしくたちの悪い話=B原書には「十歳以上」の表記があるらしいんですが、是非、今時の小学生にも読んで頂きたい。

わずか155ページに43の超短編が、つまってて、しかもすべて、奇想天外かつ、夢も希望もなく、現実的でピリッとした話ばかり。

例えば・・・
「女子ホッケー」は、アーサー・ピンカスという名の図書館員だと主張する蛸の話。

「狼男の庭」は、狼男が、自分に対する誤ったイメージを払拭すべく、ドキュメンタリービデオを作ろうとする話。

「くすぐる」は、ガールフレンドをくすぐっていたら、あまりに激しく笑ったために爆発してしまう話。

「パンダ」は、ユアグロー版●●ノート(!!)

などなど、どれも3ページ前後ですが、毒気があって、最近の大人向けのお涙頂戴∞感動安売り物語″Dきな方にも読んで欲しいです。
個人的には「ハッピー・バースデイ」「痛いです」がお気に入り。

まずは、だまされたと思って、巻頭の「両親」を読んでみて下さい。
人生って、うまくいかないものですよねえ?
posted by たちばな ますみ at 12:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外作家

2007年06月15日

「蛍」麻耶雄嵩


著者名:麻耶雄嵩(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2004.08
ISBN :9784344006645


この麻耶雄嵩「蛍」は、とにかく最後の1ページが素晴らしい!!
349ページをかけて築いてきたものを、正に土砂崩れ的に、一気に崩壊させてしまうが如き爽快感!! なかなか味わえるものではありませんよ。。。

お話は、典型的すぎるくらいの嵐の山荘≠烽フです。

大学のオカルトスポット探検サークルの六人は、京都府の山間部に佇む黒いレンガ屋敷「ファイアフライ館」へ、今年も肝試しに向かっていた。そこは十年前、作曲家でヴァイオリニストの加賀蛍司が演奏家六人を惨殺した現場だった。事件発生と同じ七月十五日から始まる四日間のサークル合宿。昨年とちがうのは半年前、女子メンバーの一人が、未逮捕の殺人鬼“ジョージ”に無残にも殺され、その動揺をまだ引きずっていたことだった。ふざけあう悪趣味な仲間たち。嵐の山荘で第一の殺人は呪われたように、すぐに起こった―。
(「BOOK」データベースより)

読み始めてすぐに分かりますが、●●トリックを使っていて、そのために地の文章が不自然になっていて読みづらいです。
再読して、じっくり読み直せば、伏線なんかに気づいて、もっと楽しめるんでしょうが、以前取り上げた乾くるみ「イニシエーション・ラブ」や、少し古いですが、我孫子武丸「殺戮にいたる病」(これも傑作!!)みたいなだまされた!!%Iな爽快感はありませんでした。。。
(しかも、この年の「このミス」では、「蛍」が11位、「イニシエーション・ラブ」が12位!! 納得いきませ〜ん!)

それより何より、犯人の絞り込みが、あまりにも簡単すぎ!!(わずか4ページほど)
犯人を特定する論理に穴が多すぎるでしょう?
本格ミステリとしては曖昧になってしまっている点が多すぎます。
●●トリックが主だと言われれば、それまでですけど。
ネタバレです
posted by たちばな ますみ at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 麻耶雄嵩

2007年06月11日

「怪盗グリフィン、絶体絶命」法月綸太郎

怪盗グリフィン、絶体絶命

著者名:法月綸太郎(著)
出版社:講談社
出版年:2006.03
ISBN :9784062705783


綾辻行人「びっくり館の殺人」に続いて、法月綸太郎「怪盗グリフィン、絶体絶命」を読みました。

「怪盗」は、「びっくり館」に比べると、ずっと子供向けで、気楽に読めました。
ただ、呪いの人形の入れ替わりに関しては、子供には、ちょっとヤヤコシイかな? とは思いましたが、これこそがトリックの要、この小説の面白さですよね。
本秀康の軽いタッチの挿絵も、このお話にピッタリです。

でも、私は「びっくり館の殺人」の方を、おすすめします。
「びっくり館」は、ストーリー、挿絵、装丁、フォント、そして例の一文まで含めて総合的に、一冊の本として、手元においておきたい、と思わせる本です。文庫本じゃだめですね。
posted by たちばな ますみ at 08:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・な行

2007年06月07日

「犬はどこだ」米澤穂信

犬はどこだ

著者名:米澤穂信(著)
出版社:東京創元社
出版年:2005.07
ISBN :9784488017187


作者・米澤穂信が言うように「犬はどこだ」は、私立探偵もの≠フ長編ミステリ。

主人公・紺屋長一郎(こうや・ちょういちろう)は、自営業を始めるにあたり、お好み焼屋を断念、犬専門の調査事務所<紺屋S&R(サーチ&レスキュー)>を開きます。
しかし、依頼されたのは、失踪人探しと、地元の古文書の解読。
失踪人探しは紺屋が、古文書の解読はハンペーこと半田平吉がそれぞれ担当することになる。
ところが、このふたつの件は、捜査するうちに、二人の知らない所で、微妙にクロスしていきます。

やる気なしの主人公・紺屋、やる気100%のハンペー、主人公の妹で喫茶店に勤める元●●●の梓、無差別に仕事を探してきてくれる大南寛など、楽しい登場人物たちが軽妙に、ストーリーを進めていきます。

が、最後には、少し重く、怖いラストが待ってます。
ラストの展開自体は、大きな手がかりがあったので、読めるんですが、最終章(Chapter7)では、ちょっとやられました。怖いですね。。。

というわけで、この本、面白いです。読みやすいし、おすすめしておきます。
シリーズ化もされるみたいだし、次回作にも期待しましょう。
posted by たちばな ますみ at 07:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 米澤穂信

2007年06月04日

「びっくり館の殺人」綾辻行人

びっくり館の殺人

著者名:綾辻行人(著)
出版社:講談社
出版年:2006.03
ISBN :9784062705790


館シリーズは迷路館か人形館あたりまでは、読んでましたが、その後は、「四〇九号室の患者」以来の久々の綾辻行人でした。

作者は、少年少女のトラウマになるようなものをって言ってたらしいですが、表紙、口絵からして怖すぎです。
七戸優(しちのへ・まさる)の装画と挿絵がとにかく素晴らしい!!
特に、p141の、読者目線の腹話術じじいなんか、最悪最恐!! リリカもやば過ぎ!!

ストーリーは、いたってシンプルです。
近所で「びっくり館」と呼ばれる屋敷で、十年前に起こった密室殺人。当時6年生だった友人俊生(トシオ)の祖父が、刺されて死んでいたのを、主人公の三知也たちが発見する。
ストーリーは、三知也と俊生の出会いから、事件が起こるまでを、回想しながら進んでいきます。

トリック(?)もそれほどキレがいい訳でもないし、本格ミステリ感も、ありませんが、面白く読めました。
でも、子供が読めばトラウマ必至、と言うよりも、とても子供向けとは思えません・・・。
私はすごい恐がりだったので、子供の時に、この本と出合わなくてホントに良かったです。

ところで、裏表紙の時計の絵ですが、MABOROSHISHA 21DAY≠チて何か意味があるんでしょうか?
口絵で、トシオが持っている本も気になるなあ・・・
posted by たちばな ますみ at 11:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・あ行

2007年06月01日

「青に候」志水辰夫

青に候

著者名:志水辰夫(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.02
ISBN :9784103986041


久しぶりに読んだ志水辰夫

「青に候(あをにさうらふ)」というタイトルと、この表紙、それと

ゆきゆきて男。涼やかに女。訣別して友ー

というキャッチコピーにやられました・・・
これだけ揃えば、もう読むしかないでしょう?

家中の一人を殺し、脱藩、江戸に戻った神山佐平は、友人の行方を捜すうち、自らも命を狙われるようになる。
ここに、昔の幼馴染であって元君主の愛妾・園子や、同じ藩士の妹・たえが絡んできて、お話は進んでいきます。
なーんていうと、ハードボイルドのお決まりのストーリーみたいですね。

シミタツ初の時代小説ではありますが、読みやすいので、時代小説が苦手な人でも大丈夫。

藩という組織の中で苦労している、たえの兄で目付けの六郎太と、行動も考え方も自分の思い通りに突き進む「青い」佐平の対比も面白いです。

でも、あのラストはどうかなあ?
posted by たちばな ますみ at 16:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 国内作家・さ行